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第4話
1.プレイ前には、必ずボーイに開始報告の電話をすること。
2.プレイ前には、必ずお互いの身体(特に性器)を入念に洗うこと。
3.プレイ中、本番行為は必ずコンドームを使用させること。
……それが拒否された場合、素股かフェラで処理すること。
4.プレイ終了後、ボーイに終了報告の電話を入れること。
5.客から延長の依頼があった場合は自分で即決せずに必ずボーイの判断をあおぐこと。
風呂場で入念にお互いを洗って、部屋に戻る。
腰にタオルを巻いて、巻かせて。深海さんをベッドに座らせる。
「ボーイにプレイ開始の電話をしますね。時間は当初の六十分でいいですか?」
スマホを片手に深海氏に確認を取る。
「あ、はい…。お願いします」
心の中でもう一度ガッツポーズを取る。
よかった、深海さんの気持ちはまだ変わってない。
トゥルルル……。
『諒太さん!遅かったですね……トラブルですか?』
「いえ大丈夫です。遅くなっちゃってすみません。これから開始します。六十分です」
『いや何もないんだったらいいんですけど。えーと今から六十分ですね、了解しました』
「はい、じゃ切りますね」
電話を切って、タイマーをセットして。
スマホをしまう。
静かに深呼吸して。
深海さんに、上目遣いで目線を合わせる。
「──……お待たせ、ふーや」
深海さんの喉がゴクリと唸ったのを確認して、俺も気合いが入る。
四つん這いでゆっくりと。ベッドに座っている深海さんのもとに向かう。そろりそろりとしなを作って、色気を醸し出しつつ近づいていく。
「リ、リョウタさん……」
また唾を呑む音が聞こえた。──やった。
腰掛けている太ももに、そっと手を乗せる。
もうひとつの手も乗せて。
上目遣いで深海さんを見ると。
真っ赤な顔して潤んだ瞳で俺を見つめ返してくれてて、息が荒んでて。
……あ。
俺のこと意識してくれてるんだ、って。
つい微笑み返してしまう。
それに戸惑いつつも微笑み返してくれる深海さんが愛らしくて。
そして。
そんな俺に反応してくれる深海さん自身を見つけてしまい、それがとても嬉しくて。
「ふーやの。舐めてもいい?」
上目遣いで聞いてみる。
「えっ…」
戸惑う深海さんが可愛くて。
反応してる深海さん自身をタオル越しにゆっくりと撫でてやる。
「んぅ……ッ」
その反応が可愛くて。
「ふふ。ふーやの……可愛い。さする度に、おっきくなってる。ふふっ」
「リョウタ、さ…ん…ッ、……アッ」
ホント可愛い。
さすりながらタオルを剥がして、まっすぐそそり立つ竿を両手で優しく握る。先端はすでに先走り液で濡れていて。
「すごい、ふーやの脈打ってるね」
手をゆっくり上下させながら、顔を近づけて先端の液体を舐めとる。
「ぁ…ッ」
身体がピクンと揺れ動く。
先端にチュッとキスをして、そのまま喉奥まで咥え込む。
「は、ぁ…、あ…ッ」
舌も使って、わざと水音を立ててフェラをする。
あ。
まだおっきくなってく。
それが愛しくて。
……俺。
──舐めてるだけなのに、反応してる。
感じてる俺がいて。
今までこんな事なかったのに。
だから余計に、念入りに。
咥え込む度に、俺の身体のあちこちがキュンキュンしてるのが伝わって。
特に……奥。
なんだかそれが気恥ずかしくて。
深海さんに気付かれたくなくて。
俺は。
……俺は。
途中で舐めるのを放棄してしまった。
いつもならフェラで一発抜かせるのが、俺のセオリーなのに。
今の感情を悟られたくなくて。
「ふーやぁ……」
「リョウタさ……!?──んぅ、ん、ンン…!」
強引に唇を重ねた。
舌も交えて。
強引にプレイを終わらせようと思った。
のだが。
「ん…ぁ、ふ、や、ぁ…ッ、んっ、んぅ、んむぁ、んんぅ…」
深海さんはキスが上手かった。
何も考えられなくなるくらいトロトロにされた俺は。気が付けばキスをしながら、深海さんのベッドに仰向けにされていて。
唇が糸をひいて離れていく。
「んぅ…」
「リョウタさん、俺の咥えながら感じてましたよね?……ほら、今も。キスでこんなに勃ち上がってる。可愛い」
見つかったのに、それが逆にドキドキしてしまっている自分がいて。
これ以上はダメなのに。
でも。
して欲しい自分がいて。
線を引かなきゃなのに。
この人に夢中になったところで、結果は見えてるのに。
そんな俺を知ってか知らずか、深海さんは俺の竿を片手で包み込みゆっくりとさすっていく。
「あ…ンッ、やっ、だめぇ…」
「そんな声で言われても。ほら、リョウタさんの、こんなに大きい…」
だんだんと擦る速度が上がっていって、それに呼応して俺の息も上がっていく。
「あっ、あん!ふぅやぁ、や、ダメ、ぁ、あぅ、やんっ!や、ぁ、アッ、あはぁっ」
身体が跳ねる。
「リョウタさん、全身で感じてる。気持ちいいんすね」
深海さんが俺の右乳首を舐め転がす。
「ふぁあ…ンッ」
ヤバいくらい気持ちイイ。
快楽を逃したくて、身体がうねる。
枕やベッドを無意識に掴んで喘ぐしかなくて。
奥がキュンキュンする。
……のに。
深海さんは弄ってくれない。
そりゃそうだ。男同士のセックス自体をまだ知らないのだろうから。
一番弄って欲しいトコを無視されて、自分でも分かるくらいに肛門がヒクついてるのが、余計に恥ずかしくて。
俺。
深海さんに翻弄されてる。
この状況にすら感じてる自分がいて。
もう訳が分かんないくらい頭の中がグチャグチャになってる。
快感から、逃げられない。
喘ぎ声が、止まんない。
身体が、──跳ね続ける。
「も……ッダメぇ〜〜ッッ!!」
ノンケの深海さんの手腕に、俺はあっけなく果ててしまった。
余韻でビクつく身体。
「リョウタさん…」
とろけた瞳でキスされる。気持ちイイ。
「ん…、ぁふ、んぅ…」
奥。触ってほしい。弄ってほしい。
掻き回して欲しいのに。
深海さんの手は、また俺の股間を擦っている。
「やぁ…っ、そこ、も、やら…ッ」
じれったくて。
「ふーやぁ……、ココも、弄ってぇ…ッ」
余韻にビクつきながらも、大股を開いてヒクついた蕾をアピールする。
「お願い…、奥がキュンキュンするのぉ…」
ようやく俺の肛門の状態を認識してくれた深海さんは、興奮して息が荒んでいて。
「リョウタさん、──エロすぎ」
そっと、指が当てがわれて。
つぷん、と。二本の指がなんなく呑み込まれていく。
「ぁ、は、ぁあ、あ……ッあ、挿入って、くるぅうぅ…」
「ははっ、すごい締め付け。俺の指、千切れちゃいそう」
深海さんの白くて綺麗な指が、俺のナカを蹂躙する。
「指じゃぁ奥まで届かないけど……ココ…とか?」
前立腺を的確に弄られる。
「あッ!あっ、ソコ、あ、あッは、すご、いぃ…い…!」
「リョウタさん、エロ可愛い」
「や…ぁ、見ないでぇ…!」
つい顔を覆ってしまう。
「駄目でしょ、デリヘルなんだから気持ちよくなってる顔みせてくんなきゃ……ね?」
気持ち良すぎて半開きな俺の口を再び深海さんが塞いでくれる。
キス。
気持ちいい。
ナカ、指で擦られて。卑猥な水音がする…。
それすらも興奮材料になっていて。
深海さん……。
……ふーや。
──ふーや……。
ヤバい。
俺。好きになってる。
どうしよう。
この人のこと、好きだ。
ただの客なのに。
一夜で終わりなのに。
たったの六十分間なのに。
好きになりすぎて。涙がこぼれる。
この一夜を、目一杯感じたくて。
俺はそっと。──コンドームを隠した。
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