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第7話

 あれから幾人もの客の相手をした。    気が付けば夕陽が傾いていて。 「ただいま帰りました〜〜」  電話番に清算用のお釣りの入った貴重品袋を渡す。 「あ〜諒太君!最後にもう一本入ってるんだけど大丈夫かな?深海さんて言うんだけど」  耳を疑った。 「えっ…あっ、行きます!!」  反射的に応えてしまった。なんだか恥ずかしい。 「よかった。時間は百八十分だから、ボーイにお金渡してくれればそのまま直帰していいからね」 「はい」    深海さん。  ふーや。    ……ふーやにまた逢える!  送迎車から覗く、前となにひとつ変わらないボロアパート。  階段を上がって二〇五号室。  深海の名札。  ドキドキしながらインターホンを押す。 『はーい』  あっ…。  ふーやの声だ。  声を聞いてるだけなのに、顔がニヤついてる自分がいて。    落ち着いて。  落ち着かなきゃ。  深呼吸、深呼吸して……。   「諒太、と申します」 『あっ!リョウタさん!』  室内でガタガタンと音が聞こえる。 『今!そっち、行きますんで……ぃいった!』  何かにつまづいたのかな?  少しずつ足音がこちらに近づいてくる度に、心臓のドキドキが治らなくて。  おさまらなくて。  ──ガチャ。  二〇五号室のドアが開く。 「お待たせ……って……お?」  コートの下から覗き見えるミニスカサンタの格好と、俺の髪色が金から黒になったのも相まって、ふーやの目がまん丸になっていた。 「似合わない……かな?」 「そんな!ことないよっ!……すっごく似合ってる。似合いすぎて、ビックリしちゃった。……あ、寒いよね!?上がって上がって」 「うん、お邪魔します」    深海さんの家に入り、ドアを閉めた。  久しぶりに入った深海邸は、あの頃と寸分違わずで。  変わらない廊下。  変わらない机の上。  変わらない、ふーやの匂い。   「あのさ、リョウタさん」  赤いサンタブーツを脱いで、廊下を歩くふーやについていく。 「なに?」 「俺あれから勉強してさ。もう身体は洗ってあるんだ」 「えっ、ホントに?」 「だから、その……」  ふーやが照れくさそうに頬をかく。 「すぐにでも、その、エッチ…出来るからさ」  ふーやが俺のために事前準備してくれていた。  その事実が嬉しくて。  泣きそうになるのをなんとか堪える。 「じゃあ、すぐに電話連絡だけするね」 「うん」  そう言うと、俺はそそくさとボーイにタイマー開始の連絡をした。   「おまたせ」  振り返った先にいたふーやはベッドの上に腰掛けて穏やかに微笑んでいる。 「リョウタさん、髪色変えたんだね」  コートを脱ぐ。 「うん。特に理由はないんだけど…」  嘘。  ふーやが連絡くれないからムシャクシャして黒にした。 「それにその格好……俺オプション頼んでないよね?」  ミニスカサンタ。 「──ふーやに、その……見せたくて。勝手に着てきちゃった…」  それを聞いたふーやが片手で顔を覆う。 「ふーや??」  似合わない?  嫌われた?? 「リョウタさん。……抱きしめていい?」 「えっ」  よかった、嫌われてない。 「うん、……抱いて?」 「じゃあ、こっちおいで」  ふーやが笑顔で両手を広げて胸元を開けてくれる。 「うん」  俺は吸い込まれるようにその中に収まっていった。  優しくぎゅってされて、俺の心臓が飛び出そうになる。  心臓の音うるさくないかな。  ドキドキが止まらない。 「遅くなってごめんね。仕事が立て込んでて、帰りも夜中だったから。なかなか呼べなくてさ」 「うん…」 「心配させちゃったよね。俺から逢いたいって言ったのにさ」 「…うん…」 「キス、してもい?」 「……うん、キス…して?」  目線が合う。  ふーやの顔だ。  どちらからともなく、お互いが吸い込まれるように唇を重ねていく。 「ん…っ、んぅ……」  一度重ねた唇と舌はなかなか離れることはなく。ふーやの舌が俺の口内を蹂躙する。 「んぅ、ぁ、ふ、や、ぁむ、ンッんっ、ぅんぅ、ふぁ…ん」  やばい、キスだけなのに。  俺、もうイキかけてる。  身体にチカラ入んなぃ……。  きもちイィ…。  舌を吸われる度に身体がビクビクする。  やだ。俺。キスでイッちゃう……!! 「ンッ、んぅん…ンンんん〜〜!!」  全身がジワァとあったかくなって、程よい痙攣が訪れる。  目の前がチカチカして、全身の力が抜けてふーやにもたれ掛かってしまう。 「リョウタさん、キスでイッちゃった?」 「ぅん…、ふーやに逢えたの嬉しくて俺……」  余韻でビクつく身体。 「可愛い。サンタの格好もすげー似合ってる。似合いすぎてて俺、玄関で襲いそうになったもん」  襲ってもよかったのに。 「ホント?嬉しい……」 「ねえリョウタさん、スカートの中、見ていい?」 「うん……いいよ?」  ふーやに見てほしくて、下着も新調した。  ベッドに腰掛けるふーやの前に立ち上がって、焦らすようにゆっくりとスカートをめくる。  見て……ふーや。  エッチな俺のココ。見て。 「うっわ……エロ……。リョウタさんのおっきくなってて、赤いレースのパンティに収まりきれてないね。それにさっきイッちゃったから、精液がベタついてて……」  ふーやの細い手が、下着ごと俺を握りこむ。 「ッあ……っん…」 「すっごいエッチ」 「ふぁ…っ!?」  ふーやが俺の先端を舐めた。 「俺のキスでこんなになってくれたんだね。かわいい、リョウタさん」 「あはぁ…ッッ!」  ふーやの口内に俺のが含まれてる。 「んっ、んふぅ、あっ!あふん、あっ、やぁ、先っぽ吸っちゃヤダぁ…っ!」  両手で少しずつ下着がズラされて、尻を揉まれつつ、だんだんと指たちが肛門に吸い込まれていく。  つぷ。  あっ、ふーやの指が……入ってくるぅ。  前を舐められ吸われながら、後ろも指で翻弄される。  卑猥な水音と俺の嬌声が部屋にこだまする。  あぁ、気持ち良すぎて足に力入んない…。  でも耐えなきゃ。 「あふぅ……ンんッ…」  あっ。後ろ、前立腺当たって……。  ダメ、そこばっか。  指、増えてる。前もすごく吸われて。  俺、もう耐えらんない……!! 「ふ、やぁ…!も、イッちゃ…ッッああッ!!」  俺の身体が弓なりにしなぐ。  ふーやの口内に精液がほとばしる。 「あ…っ、ふーや、ごめ……ッ」  亀頭を思い切り吸い上げられる。 「ふあぁぁあはぁぁ……っっ!!」  指はずっと前立腺を擦り続けていて。  気持ちいいのが止まらない。  ずっと頭がフワフワしてて。  身体は痙攣しっぱなしで。 「ダメ!もう、ずっと、イッてるからぁ……!!」  ナカイキしてるところに前立腺を弄られてるものだから、快楽の連鎖が止まらない。  でも。  もっと奥がウズウズしてるのも本音で。  もっと奥、突いてほしい。  ふーやのが、欲しい……。 「リョウタさん、今日いっぱいお仕事したんだね。精液の量が少ないや、飲みやすいからいいけど」 「やっだ…、汚いよ…っ」 「リョウタさんの汚くないよ」 「それに俺、奥が疼いて…、ふーやのが欲しくてたまんないから、早く挿れて欲しぃ──」 「もう、すぐそういう事言うんだから。そんな事言うリョウタさんには…」  あっ!  指が、増え…! 「あっあっ、指増やしちゃダメぇ……!」  前立腺をふーやの指達が蹂躙していく。  その度にいやらしい水音がグチュグチャと、俺の耳をつんざして羞恥心があざ笑う。 「ココ。弄る度にリョウタさんの腰が跳ねるの可愛いね」 「んっ…、もう…!ばかぁ…ッ、あっアッ、あぅ、ぁん、や、も、ふ、ぅやぁ…ん」 「リョウタさん、気持ちいい?」 「うんっ、ふーやの指ぃ、きもちイィよぉ…っ、あはぅん!良すぎてまたキちゃう…ッ!ふあぁあぁ…ッア、あはあぁぁあ!……ぁ…ッ」  ナカイキで不規則な痙攣が続くなか、ふーやの指は動きを止めない。 「あっ、あぅ、あぁぁ…やらあぁ…も、指、いやぁ…、ふーやのでイキたいのにぃ…ッあ、や、またキちゃう、イッッくうぅう…ッッ!!」  何度目かの絶頂の後、ふーやはやっと指達を引き抜いてくれた。 「ふあぁ…ッ」 「……おっと」  ふらついた俺の身体をふーやが片手で支えてくれて。  思わず目が合って。  流れるようにキスをして。 「リョウタさん可愛い。俺もう我慢出来ないよ?」  我慢しないで。  ──全部吐き出して欲しいから。 「俺も我慢出来ない。ふーやの、早く挿れて?ふーやのコレ、欲しいよぉ…」  ズボン越しのふーやの猛りきったイチモツを物欲しそうに指で撫でる。 「ふ…ッ!…リョウタ、さ…ッ」  そのまま、優しく握って。上下に摩る。 「ぁ…っ、それ以上されたら…俺……!」  我慢しているふーやの顔がなんだか可愛くて。  ついつい虐めたくなっちゃって。  上下に擦る手を速めてしまう。 「かわいい、ふーや」  キスがしたくなって、ねだるように目を合わせる。それに応えるように優しく顔を傾けてくれる。 「んっ、んン…」  そのまま、もつれ込むように。俺はふーやに押し倒されてベッドに背を向けた。 「んふ…ぅ……んっ…ふぅやぁ…」 「リョウタさん…挿れていい?」  見上げた先にあるふーやの雄の顔に見惚れてて。 「うん…、きて?ふーやのが欲しいの…」  誘うように股を開く。 「ゴム、つけるね?」 「……うん」 「ミニスカサンタ、リョウタさんに似合ってる。すっごいエッチだもん」  俺の蕾にふーやのが当てがわれる。 「ココもヒクついてて、ほんとにエッチ」  指で散々解された俺の穴は、ふーやをなんなく受け入れていて。 「あ…はぅ……っ」  ふーやのが奥まで届く。    俺、またふーやと繋がれてる。    そう思ったら自然と涙がこぼれていて。 「痛い?」  あっ、違う。 「違うの。……ふーやとまた繋がれたことが嬉しくて、俺──アッ!あぅッんん!」 「もう……!」  突然の激しい動きに、快楽に翻弄される。  ふーやから与えられる快感が気持ちよくて、室内に嬌声がこだまする。  奥を突かれるたびに、腸壁を擦られるたびに、俺の口からだらしない声が溢れる。 「あう、あっ、あ、あっん、あん!はぅ、ぅぁ、ァア、っん、ふぁ…ンッ」  快楽を逃したくて両手が宙を舞う。  枕やベッドシーツを掴んだり、両手で顔を覆ったり。 「ふーや、ふ、ぅやぁ……ッ」  ふーや。  ふーや。  ふーや。  愛しい人の名前じゃない名前を呼ぶ。  今の俺はこれが精一杯で。  俺の知ってる深海さんの名前だから。 「リョウタ、さん…!」  向こうも同じで、俺の本名はまだ知らない。  それでもいい。  また逢えるなら。    また繋がれるなら、些細なことだ。  ──この時が、永遠と続けばいいのに。  タイマーよ、……鳴らないで。

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