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第2話・闇の狩人。(5)
ユーインは妹のベネットと親しく、彼らを知る者は皆、近々婚姻するのではないかと噂されていた仲でもあった。
それはエイドリアンも同じ気持ちで、だからこそユーインは妹を探す手助けをしたいと告げた彼の言葉に頷いた。
しかし、エイドリアンはその頃、まだヴァンパイアに成り立てで、生きた屍というものがどれほど欲望深い生き物であるかを理解していなかった。
それを知ったのは、ユーインとの再開を果たした何度目かの新月を迎えた夜のことだった。
その日はなぜか今まで神から与えてもらっていた古くなった献血用の血液をまったく受け付けず、身体から何かが這い上がってくるような、エネルギーが枯渇していた。
それが血液の渇望だとエイドリアンが理解した時には既に遅い。
なんと彼はあろうことか、無意識にも側にいた妹の婚約者にもなろうとしているユーインを組み敷き、襲ったのだ。
エイドリアンが正気を取り戻した時にはすでに遅く、彼が着ているすべてのものを剥ぎ取り、しなやかな肢体をあらわにさせ、自らの欲望を後ろの窄まりに埋めていた。しかも彼の細い首筋は赤く染まり、血液の筋を二本、流していた。
幸い、神の手によってヴァンパイアに変えられたエイドリアンは同胞を作ることはできない。よって彼の血液を吸ってもユーインは冥界の悪魔のままでいられる。しかし、よりにもよって妹の想い人である彼に自らの欲望を刻ませ、組み敷いてしまった。
ユーインの身体には一生消えない刻印を刻んでしまったのだ。
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