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第2話・闇の狩人。(6)

 その事実がエイドリアンを苦しめた。  けれどもユーインはそんなエイドリアンを許した。それだけではない。あろうことか彼はエイドリアンに条件を突きつけたのだ。  血液を渇望した時、ユーインと同じように誰かを抱くならば、それは自分だけにしてほしいと告げた。  エイドリアンは、ユーインがいったい何を考え、そう言ったのかが理解できなかった。  よりにもよって愛するベネットの義理の兄になるだろう、それも同性に抱かれたのに、である。  憎悪こそ抱いたとしても、渇望した時はまた自分だけを抱いてという言葉が出てくるとは思いもしなかった。  しかし、彼は心優しい妹が選んだ婚約者だ。  彼もまた、妹同様に心根の美しい性格なのだろう。  ベネットを深く愛しているからこそ、彼女の兄には低俗になって欲しくないのかもしれないとエイドリアンは思った。ユーインはエイドリアンにはプリンスとしての誇りを失わないで欲しいと、そう考えたのだろう。  その条件を突きつけられたエイドリアンは、妹を想うユーインの気持ちに甘えた。  その日から、エイドリアンは血液を渇望するたびにユーインを欲し、彼を欲望の捌け口に使った。そして情事が終わるとぐったりと寝台に横たわる彼の姿に自ら犯した罪の深さを悔い続ける。 「……エイドリアン?」  自分を見つめる視線に気がついたのだろう。  長い睫毛のベールは振り払われ、代わりに美しいルビーの目がエイドリアンを写した。 「もう少し眠った方がいい。まだ体力が回復していないだろう?」

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