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第2話・闇の狩人。(11)

 けれどもひとつだけ確実に理解していることは、エイドリアンがまだ、『完璧な食事をしていない』という点についてだ。  立て続けに果てたユーインは、ふらつく身体に鞭打って寝台から起き上がるとエイドリアンに手を伸ばした。 「そんな身体で悪魔と戦うなんて無茶だ。すぐにやられてしまう。ねぇ、ぼくの血をもう一度飲んで。そうすれば今よりもずっと動きやすくなるから」  エイドリアンの体力はまだ完全に回復していない。  その証拠に、彼の瞳孔は開ききっているし、欲望が邪魔をして冥界のプリンスとしての生まれ持っての気高い魔力を抑えつけている。彼の身体が渇望している証拠だ。  いくら低俗とはいえ、いまの彼の状況下で複数の悪魔と一線交えるのは無謀だ。飢えの中で戦うなんて自殺行為にすぎない。  それに自我を失ったままだと、まかり間違えば本来助けるはずの人間すらも殺してしまう危険性がある。しかも、エイドリアンは類まれなる魔力を持つ悪魔だ。彼は強靭な肉体と魔力、そして不死の力を手に入れたヴァンパイアでもある。  ヴァンパイアと冥界のプリンスの力はエネルギーが異なる。  そのエネルギーが互いにぶつかり合い、自我を超えれば暴走しかねない。そうなれば、エイドリアンの肉体はどうなってしまうのだろう。腐敗してしまうのか、それとも新たな化物となってしまうのか。  ユーインは大きく首を左右に振り、脳裏に過ぎった恐ろしい考えを否定した。

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