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第7話・理性と欲望の狭間で。(1)

 茶色く古ぼけた、けれど内装はしっかり行き届いている三階建てのアパート。その一角にある二階の奥の部屋に戻ったエイドリアンは、ベッドの上でぐったりと横たわるユーインを見下ろした。  青白い顔は力なく、本来の魅力的な赤い唇は青紫色に変色している。出血は治まるどころか容態はますますひどくなる一方だ。  エイドリアンが止血にと彼の身体に巻きつけたシャツは、見事に赤く染まっていく。  エイドリアンは事の重大さに顔をしかめた。  ユーイン自身の血液や冷や汗がべっとりと染みついた衣服をすべてはぎ取り、無防備な肢体を剥き出しにさせた。  本来なら一糸も纏わないそこに見えるのは、陶器のような肌をした美しい身体だ。  しかし、今目の前にしている彼は悪魔から受けた攻撃により傷口がぱっくりと開きっており、そこから絶え間なく血液が流れている。  まずはある程度傷を癒し、止血せねばならない。  その後で輸血をして傷を塞ぐ必要がある。  それが最善の策であり、それしかユーインを助ける術はないとエイドリアンは思った。  ここで重大な問題は、止血している間に彼の命という灯火が消えてしまわないかということだ。  とはいえ、深手があるまま輸血をしたとしても、結局は体力が削がれたまま息を引き取る可能性がある。  生きるか死ぬかは、すべてユーイン次第だ。  エイドリアンは思いつく限り自分へ悪態をつくと、彼の肢体を跨いだ。  それから傷ついた柔肌に唇を落とすと悪魔から受けた傷口を舐め取っていく。

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