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第7話・理性と欲望の狭間で。(2)
――それというのも、ヴァンパイアの唾液には催淫効果を伴いながら、なおかつ治癒の能力も持っているからだ。
催淫効果があるのは他人から血を抜き取る時に気づかれないようにするためのもので、傷を癒す力は血を吸うために牙で肌を傷つけた後、襲ったことをわからなくさせるためのものだった。
けれど、快楽へ誘う催淫効果も今の深手を負いすぎたユーインには効果はないようだ。
深く傷つけられた肌に刷り込まれるようにしてエイドリアンの舌が触れれば激痛を伴う。
ユーインの真っ青に染まった唇からは苦しみもがく声が漏れた。
自分こそがこうなるべきなのに、なぜ彼がこのような目に遭わなければならないのか。
エイドリアンは自分に叱咤する。
ユーインの優しさが動かなくなったエイドリアンの心臓を痛めつけた。
エイドリアンは苦しみもがく華奢な腰を逃げないように両手でしっかりと固定し、そしてひたすら傷口に舌を押し込み、皮膚を塞ぐことに専念した。
そのたびに呻き声をあげるユーインの姿に苦しみを覚えながら……。
そうしてどのくらい経っただろう。
傷口から流れる血液が少しずつ癒えた頃――。
ユーインの唇から漏れる呻き声は次第に消え、代わりに艶のある悩ましげな声が聞こえてくるようになっていた。
エイドリアンはユーインの変化に気づき、ゆっくりと上体を反らして彼の美しい顔を見上げる。
青白い顔に浮かぶ玉のような汗は次第に消えつつあることを知った。
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