21 / 92
第3話・本心。(4)
そしてユーインは、彼の誠実さにつけ込んだのだ。
一度ヴァンパイアに抱かれた痕跡は消せないからと、血液が渇望した時は自分を使って欲しいと無理矢理約束させた。
すべてはエイドリアンに抱かれるために。
彼は冥界の王の子。そして自分は王の正妻の側近を辞めた、ただの悪魔にすぎない。どうせこの恋は実らない。ならばせめてエイドリアンの熱に溺れたい。彼に抱き殺されるのも本望だと考えた。
……それなのに。
彼は今も尚ユーインを気遣い、自分の身体を気にも掛けずに戦地へ向かおうとしている。
エイドリアンは優しすぎる。
「貴方がぼくの血を飲まないというなら、ぼくも行きます」
(そして貴方の刃になる)
ユーインはエイドリアンを守るため、彼の広い背中を追った。
ともだちにシェアしよう!