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第8話・追跡。(2)
彼女の痕跡を追えども一向に姿が見えないところから察するに、エイドリアン同様、既にあの裏切り者エメロンに殺されたの可能性もあった。だが、今日の一件でそうではない可能性が出てきたとエイドリアンは思った。
エイドリアンとベネットを生んだ彼女は母親であるにも関わらず、まるで独身でいるかのように振る舞って子供には興味を示さなかった。しかしながら彼女はベネットを連れ去り、人間界へと降りた。
それは彼女が単独で決めたものだと思ったが、実は密通していた『それ』と冥界を乗っ取ろうと画策したのだろう。
ベネットを人質にして……。
袖の下で何を思っているのかわからない、あのしたたかなエメロンという女は、今はまだ姿も現さないが、全面的に冥界を乗っ取る算段が整えば、ベネットを盾に襲ってくるだろう。
冥界がすべての鍵となる。
「アルテミス、俺の考えが正しければ冥界をかけた戦いが始まろうとしている。人間界の無能な悪魔が活発化しているのはおそらくその一派が冥界を手に入れようと画策しているからだ。俺とユーインは一度冥界に戻る」
『彼女』が聞き耳を立てているということをエイドリアンは感じ取り、空の中呟くように告げた。
それはエイドリアンが冥界に戻るということを決意した瞬間でもあった。
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