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第9話・密林の支配者。(9)
だからエイドリアンの行動が遅れてしまう。
周囲は瘴気の渦で満ちており、ユーインの足元にしか緑が生えていない。
ユーインが身動きできないことをいいことに、ラードーンの長い首はうねり、そして絞め殺さんばかりの勢いで細い身体に強く巻き付いた。ぎしぎしと今にも骨が砕けそうな軋んだ音が周囲に響く。同時に苦しみもがくユーインの悲鳴がエイドリアンの耳を劈く。
しまった! エイドリアンがそう思った時には既に遅い。
ラードーンはもっと苦しみもがく姿がエイドリアンからもよく見えるようにとユーインを宙に晒し、そして強く締め付ける。
エイドリアンはユーインを戒めている首を狙って切っ先を振り下ろした。
エイドリアンが攻撃し、ラードーンの頭の大半は地に倒れたが、周囲に蔓延っている残りの首がエイドリアンを射程圏内に置いていた。
少しでも動けばエイドリアンを殺し、ユーインの息の根を止めるという無言の圧力だ。
ラードーンはユーインがどうなったのかを確かめるため、口から赤い舌を出し、両腕に巻きつけると身体の戒めを解いた。
そうして見えたのは、鋼の鱗に締め付けられたおかげで彼が着ていた衣服は散り散りに破れ、代わりに現れたのはしなやかな陶器の肌だ。
両胸にある突起が赤く腫れ、揺らめく炎に照らされたその肢体はなんとも艶かしい。
彼の肌のいたるところにはエイドリアンの赤い刻印が刻まれている。それがいっそう艶を纏う。
エイドリアンに抱かれたユーインの肉体はとても美しい。ラードーンは目を奪われた。
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