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第10話・虚ろ。(5)
「エイドリアン、お願い……貴方が欲しい」
ユーインはエイドリアンから与えられる狂おしい熱が欲しいと腰をくねらせ、強請った。
エイドリアンに抱かれる時だけが、素直に本当の気持ちを言える瞬間なのだ。
ユーインは躊躇することなく普段禁止しているその言葉を口にした。
「それだけでいいのか?」
エイドリアンは口の端をつり上げ、意地悪く尋ねてくる。自身の男根をユーインに見せつけた。
自分が乱れる姿に感じてくれていたのか、彼の中心は大きく脈打ち、これ以上ないくらい反り上がっている。
「全部欲しい。お願い、エイドリアンの熱をすべてぼくの中に注いで!!」
そして貴方の心ごとぼくにください――。
ユーインは心の底からの願いをなんとか遮って強請った。
「ならば自分で咥えてみせろ」
エイドリアンはそう言うと、ユーインを膝立ちにして下ろし、今にもはち切れそうなほどの男根を顔の前に突き立てた。
けれども一度果ててしまった身体は力が入らず倒れ込みそうになる。エイドリアンはユーインの後頭部に手を添えて支えると、ユーイン自らが行う愛撫を待った。
彼の熱い猛りに唇を寄せ、彼から与えられた愛撫を思い出しながらその口に含む。口内に広がるのは海水の塩味と、ほんのり生臭い男の香りだ。
不慣れにも懸命に舐め取る姿に彼も感じてくれているのか、薄い唇から呻るような低い声が聞こえてくる。
「ユーイン……」
夢中で咥えていたから自分の名を呼ぶ声にはっとして顔を上げると、口内から彼が取り除かれた。空気を纏った音がして、ユーインは腰を揺らした。
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