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第12話・反発。(3)

 エイドリアンは小さく舌打ちをするとユーインを守るために前屈みになり、腕の中で静かに眠る彼の頭上に影を生み出した。  石のつぶてはユーインへと当たる直前、鈍い音をたててエイドリアンのこめかみに当たった。  赤い血液が彼の破れた皮膚から一筋流れはじめる。  痛みはある。しかしエイドリアンは前に進むため、ゆっくりと上体を起こし、一歩を踏み出す。  途中、エイドリアンと目が合った冥界の住人は怯え、逃げていく。  ひとりが逃げればまたひとりと尻尾を巻いて逃げるのは臆病者の証だ。  そんな奴らを相手にすることはない。  冥界を裏切った母親は悪いが、しかし連れ去られた妹のベネットを自業自得だとそう言って探し出そうともしてくれない住人も、国が大事だとただただ玉座に鎮座する冥王ハデスも、まったくもってどいつもこいつも反吐がでる。  ――だが、一番忌むべき存在なのは彼らではない。  裏切り者の母親にみすみす殺され、そしてヴァンパイアという化け物に成り果て、さらには妹の恋人を食料にした醜い自分だ。  額から流れる一筋の血液は彼のダークブルーの瞳を濁す。片目は赤い景色に変化した。  これはまさしく自分が居るべき世界なのだ。  そう自分に向けて罵る。  そうして砂地が広がる彼岸をただただ抜けていった。

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