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第13話・招かれざる客。(2)

 流石は屍。まったく、ヴァンパイアとしての再生能力のすさまじさには度肝を抜かされるばかりだ。  ――とはいえ、それはあの彼岸を抜けてここまで到達するのにあまりにも時間が経過しているのも事実ではあった。  長い旅の果て。やっと城まで辿り着いたと息をつくのも束の間、この先で彼を待つのはハデスにもっとも忠実な僕がいる。  エイドリアンはすっかりそのことを忘れていた自分自身に毒づいた。  それというのもエイドリアンがこの冥界にいたのは数年前のことで、あまりにも事を急いていたこともあり、がこの城を守っていることが頭から抜け落ちていたのだ。  忠実な僕は恐ろしく凶悪で、門番ということもあって来訪者には容赦ない。  こんなことなら高価な宝石を渡したカロンからおつりとして蜂蜜でもいただいておくべきだったと今頃になって後悔していた。  なにせその僕、甘いものが大好物でそれがあればいかに忠実といえども主のことはおかまいなしになるからである。  相変わらず強固な外壁に守られた城だ。  エイドリアンはユーインを人目につかない城壁の物陰にそっと下ろし、城をぐるりと囲んだ壁を見渡した。  それからひとつしかない巨大な門へと進んだ。 『この場に足を向ける愚かな者よ、お前は何者ぞ』  発せられた地底深くまで響く低い呻り声が威嚇する。 「久しぶりだなケルベロス。もう俺のことを忘れたか?」  エイドリアンは目の前にいるに向かって挑戦的に口角を上げた。

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