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ライバル登場5
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微妙な雰囲気を漂わせながら去って行く大和に視線を注ぎつつ、星野さんに頭を下げる。
「星野さん、本当にすみません。大和のヤツ、ワガママなんですよ」
「花園さんがしっかりした島田さんにベッタリなのは、見ていて微笑ましくなっちゃいました」
「アハハ……あまりベッタリしてほしくないんですけど」
むしろ、付きまとわないでほしいと願ってしまった。
「島田さんは面倒見がいいから、なんだかんだ文句を言っても、花園さんを可愛がっちゃうのかなって」
「いえいえ、むしろ俺のほうが翻弄されていると思いマス」
実際のところ、スマホに残された殴打の写メで脅されているので、思いっきり翻弄されているのである。
「島田さんさっきの話、本気にしてくれませんか?」
「さっきの話?」
「付き合ってくださいって言ったの」
「あー、アレですか」
なんだか照れくさくて、無意識に頭を掻いてやりすごす。
「私じゃダメですか?」
「すみません。俺の見た目がこんなだし、キレイな星野さんが隣にいるのが、なんだか申し訳ない気がして」
当たり障りない会話を心がけたが、俺のこのセリフで諦めてくれないだろうかと思った。
「誰かの目を気にして、お付き合いするようなこと、私はしませんよ?」
俺の顔をきちんと見て答えてくれた言葉に、星野さんの本気を感じた。
「へっ?」
「島田さん、さっきからご自分の気持ちよりも、周りを気にした発言ばかりしてます。それって、過去になにかあったんですよね?」
一瞬だけ口を引き結んだが、言わないときっと納得しないだろう。
「大学時代に付き合った彼女がいまして、並んで歩いてると、いつもいろいろ言われたんです。美女と野獣的なコトばかり」
「それは島田さんとしては、彼女に気を遣いますね」
「はい。俺がもう少しだけいい男だったなら、こんなことを言われずに済むのにって。彼女がフォローしてくれるたびに、いたたまれない気持ちになってしまって、結局別れたんです」
大和のように整った容姿だったら、なにも気にすることなく、星野さんとお付き合いすることができるだろう。
「周りが気にならなくなるくらいに、島田さんを私に夢中にさせたいかも!」
「星野さん……」
「だったらまずは、お友達になってみません? LINEの交換しましょ?」
友達という言葉で、なんだか気が楽になったので、LINEの交換をした。
「島田さん、私たちは友達同士なんですから、仕事の愚痴とかいろいろやり取りしましょうね」
「はい、よろしくお願いします」
こうして星野さんとLINEを交換したことで、毎日やり取りすることになってしまったのだった。
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