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第8話

「世蓮、気に入った子が居たら言うんだよ?」 どのくらいこの場に居るんだろう? 颯天と2人でワインのボトルを数本空けた頃、凭れる世蓮に颯天がそう呟いた。 今日のお買い物の目的は「世蓮のペット探し」だから。 もう何人もの商品達が競り落とされて行ったにも関わらず世蓮は動こうとはしない。 もしかしたら世蓮はペットなんて望んでないのでは? ふとそんな事を思ってしまった。 もういい加減この空間にも嫌気が射してきた俺はグラスの深紅の液体を揺らして遊ぶ。 「続いての商品はこちらです。」 進行役の声の数秒後 「颯天。」 世蓮の声が聞こえた。 「あの子がいいの?」 舞台を見つめる世蓮に聞くと小さく頷く。 「分かった。」 そう言って世蓮の髪にキスを落とすと颯天はサイドテーブルに置かれたベルを優雅に揺らした。 それで交渉成立。 舞台の上で小さく震える商品はものの数秒で颯天に落札された。

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