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第16話

部屋に入るなり俺は鍵を掛けた。 ネクタイを緩めながらドカッとソファーに座る。 「さっきの・・・家族って・・・」 閉ざされたドアの前で佇んだままのヒロが消え入りそうな声で聞いてくる。 「まんまの意味だよ。今日からヒロはこの家の、俺の家族の一員だ。」 手招きすると警戒しながらも近付いてきたヒロの腕を引いて抱き止める。 俺は家族がどんなものか知らない。 小さい頃からこの大きな屋敷に執事やメイド達と暮らしてたから。 でも・・・ヒロとなら俺が空想でしか知らない家族になれる気がする。 根拠も何も無いけど直感でそう感じた。 「ヒロ。俺の家族になってくれる?」 見た目よりはるかに細い体を折れないように注意しながら抱き締める。 首筋に顔を埋めて低く囁けばヒロの体温が上がった気がした。 「いいな?」 駄目押しに呟けば俺の背中に腕を回して小さく頷いた。 きっとヒロの中ではまだ警戒心は解けてないとは思う。 それならゆっくりゆっくりヒロが俺を信じてくれるまで囁くよ。 『君と家族になりたいよ』って。 そしてその深藍色の瞳が桜色の形のいい唇が俺だけを見つめて俺だけを求める日まで。 俺は俺の全てを与え続けるから 。 大きな窓から差し込む月明かりの中、俺たちはずっとずっと抱き合ってた。

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