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第6話

優しかった主人が天に召されて数日後。 天涯孤独だった筈の人の子供と名乗る男が現れた。 「ここは俺のオヤジの屋敷だ。見ず知らずのお前に遣る道理はない。」 主人とは似ても似つかない男の瞳が僕を蔑む。 生前からお世話になってた弁護士に相談したが、金と欲に負けて主人の遺言はこの世から抹消されてた。 無一文になった僕は僅かばかりの服と主人との思い出を抱いて大きなお屋敷を出る。 そして僕は二度と来ないと誓った『夜来香』にまた舞い戻った。 他に行く所が僕には無い。 まさか自らこの薄汚れた歪んだ世界に帰るなんて・・・ 「おかえり、ヒロ。今度も高値で売ってやるからな?」 オーナーの歪んだ笑顔が僕に向けられる。 この時もう一度誓った。 心は捨てよう。 何も望んじゃいけない。 主人に貰った御守り代わりのネックレスに思い出も心も封じ込め、また僕は運命に身を任せた。

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