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第8話

「僕は・・・・・・・・・ヒロ。」 名乗ると彼―遵は満面の笑みを向けてくれた。 何か・・・犬みたい。 「ヒロは・・・あ、呼び捨てでいいよね?僕の事も“遵”って呼んでくれていいから・・・最近来たの?僕は2ヶ月前に来たんだ。」 よくそんなに一気に話せるなぁなんて感心してしまうくらい早口で遵が話し出した。 この店はだいたい1ヶ月くらいで“商品”を仕上げる。 2ヶ月掛かったって事は・・・ 「遵っておバカさん?」 真面目な顔で呟いた僕の言葉に遵が固まる。 そして次の瞬間。 「僕、おバカさんじゃないもん!!」 これ以上膨らまないだろうと思うくらい頬を膨らませて拗ねた。 この店で“商品”同士が会話する事はまず無い。 だってオークションが終わればそれぞれがそれぞれの主人の元に連れて行かれるんだから。 まして名乗り合うなんてあり得ない。 妙な緊張感の漂う室内に響く遵の少し高めの掠れた声。 リラックス効果があるのか遵の人柄なのか。 前の時とは違う穏やかな心に驚きながらも心地良かった。 「ヒロは笑うと可愛いね。」 遵の指摘に自分が笑ってた事に気付く。 主人が死んでから忘れてた 行為に思わず苦笑いが零れた。

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