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第10話
遵が呼ばれて少しして僕も呼ばれた。
いよいよか・・・
誰も居ない部屋で1人で待ってるのも嫌だけど、ステージまで行く廊下を歩くのも死刑台に登る気分で嫌だ。
無言のまま従業員に連れられて着いたのはステージに繋がるドアの前。
いよいよ刑が執行される・・・
1人そんな事を考えて頬を緩めてからドアに手を添えた。
深呼吸を一つ吐く。
ゆっくりと手に力を込めて押せば、趣味の悪いドアが地味な音をたてて開いた。
眩暈がしそうなくらい眩しい光が瞳を刺す。
数回瞬きをして足を踏み出した。
どよめく会場。
僕に注がれる好奇の眼差し。
中央に立って僕はたくさんの客達が座る後ろの壁を睨んだ。
「本日、最後の出品になります。」
司会者の陰湿なセリフが場内に響く。
僕は握った手にかいた汗をみすぼらしい服でそっと拭った。
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