32 / 130

第12話

視線を外しステージを降りる。 従業員に連れて行かれたのはさっきより少し小さめの部屋だった。 「あ、ヒロ。」 部屋には“商品”が数人居てその中には遵も居た。 僕はゆっくり遵に近付く。 「オークション終わったね。」 見上げた顔が優しく微笑んでて僕は何だかホッとした。 「終わったね。」 遵の隣に腰を下ろして呟く。 運命はもう動き出した。 覚悟しなきゃ。 少しして従業員が僕らを主人の元へと案内した。 なぜか僕と遵は年配の従業員に同じ部屋へと案内されて ドアの前で立ち止まった時にお互い顔を見合わせた。 「お前達はこの部屋のお客様方に買われたんだ。店にとっても大切なお客様だから粗相のないように。」 そう念押しされた。 僕はさっき見上げた部屋を思い返す。 あのマヌケ面の客がここに居るんだろうか? 期待と不安が入り混じって思わず隣の遵の袖口を掴んだ。 「一緒なら・・・大丈夫だよ。」 僕にしか聞こえない声でそう呟くとフワッと笑ってくれた。 大丈夫。 その根拠のない言葉が凄く心強かった。 重たそうなドアを開けて従業員が中に入る。 続いて僕と遵が中に入ると、こちらに背を向けてた男達が一斉に振り返った。 そこに居たのはやっぱりさっき見た人達で。 あのマヌケ面の男はやっぱりマヌケ面して僕を穴が開くほど見つめてた。

ともだちにシェアしよう!