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第10話

長い1日を終えて会社を出る。 運転手に颯天の家に行くように伝えてシートに体を沈めた。 不思議だ。 いつもなら仕事の疲れで重い体も今日は気怠さを感じなかった。 日も沈み夜の帳が降りた頃、颯天の屋敷に着く。 車寄せに車が停まると運転手が開けるのを待たずに自分でドアを開けた。 出迎えに出て来た執事の挨拶もそこそこにリビングに向かう。 「お、いらっしゃい。早かったね。」 朝のスーツとは違いラフな普段着で座り心地のいいソファーで寛ぐ颯天が手にした雑誌から顔を上げて微笑む。 「ヒロは?」 早く顔が見たい。 何故か心が逸る。 「こっちだよ。」 俺の気持ちを察したのか妖しく微笑むと颯天が雑誌を置いて立ち上がった。 広いリビングを出て行く後ろ姿を急いで追う。 2階に上がって奥の左側の大きな扉の前で立ち止まる。 「静かに・・・ね?」 厚みのある柔らかそうな唇に右手の人差し指を当ててから静かに扉を開けた。

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