72 / 130
第11話
「そうだ。さっき執事さんが言ってたよ。ヒロとヒロの主人が来るって。」
シアが唇に左の人差し指を押し付けて宙を見上げながら呟いた。
これも颯天の仕業だな?
どこまでも僕に甘い主人に呆れながらも胸の奥がほんのり温かくなる。
愛される事を忘れてしまった僕にたくさん愛を与えてくれる颯天。
嬉しい反面、今無性に貴方に会いたくなった。
会って、抱き締めて、言葉の代わりにキスをする。
「世蓮!?」
貴方の温もりを探して近くに居たシアの体を抱き締める。
「少しだけ・・・こうしてても?」
細い首筋に顔を埋めて囁けば答えの代わりに抱き締めかえしてくれる。
暫く僕はシアの優しい温もりから抜け出せないでいた。
ともだちにシェアしよう!