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第17話
黙ったままその凛々しい顔を見つめてると、薄い唇がゆっくり開いて言葉を紡いだ。
「俺は今まで人を愛した事が無かった。愛し方すら知らなかった。でも・・・颯天と世蓮を見てて思ったんだ。『人を愛する事って素晴らしい事なんだ』って。」
溢れる言葉に僕は黙ったまま耳を傾ける。
「颯天がお手本なんだ。だから・・・ヒロが幸せそうに見えるって事はそれだけ世蓮も幸せだって事だよ。」
いつの間にか僕の頬に熱い液体が溢れてた。
こんなふうに言って貰えるなんて思ってなかったから。
僕にだって今の状態が“普通”じゃない事くらい十分分かってる。
いつかこの幸せが泡のように消えて無くなる事も。
だからせめて今だけは幸せでいたい。
いつもそう願ってた。
声も出さずにただ涙を流す僕の頭を孝惟さんの大きな手が優しく撫でる。
あの人と同じ温かさに涙は止まる事なく流れ続けた。
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