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第18話
『会いたい時に貴方は居ない・・・』
そんなフレーズをどこかで聞いた事がある。
いつも側に居るからあんまり感じた事無かった寂しさ。
会えないと分かってるからかな?
今無性に貴方に会いたい。
抱き締めて、唇を甘く痺れさせて欲しい。
小さく震える腕で自分自身を抱き締める。
これ以上僕から雫が落ちない内に帰ってきて。
貴方無しじゃあもう僕は息も出来なくなってしまうから。
「孝惟さん・・・ありがとうございます。もう、大丈夫です。」
綺麗にアイロン掛けされたシャツの袖口で目元を拭うと、何も言わずに頭を撫でててくれた孝惟さんに腫れぼったい笑顔を向ける。
あの人に似た温もりにこれ以上触れてたら僕はおかしくなるから。
「世蓮。」
僕を真っ直ぐ見つめる孝惟さんの瞳が微かに揺れた。
何でも見通せそうな瞳に視線が外せない。
「世蓮はもっと甘えてもいいと思うよ。今まで世蓮がどんな生活をしてたかなんて俺は知らない。でも・・・」
膝に置いた僕の左手に孝惟さんの右手が重なる。
「今は俺にとって世蓮は大切な友達だ。だからもっと甘えてくれていい。1人で我慢するな。な?」
その言葉にまた雫が溢れた。
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