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第4話
「牡丹、幸神様がお見えになったよ。」
内線で伝えられ部屋の玄関で待つ。
数分後、インターホンがなって内鍵を開けると扉がゆっくり開いた。
「いらっしゃいませ、幸神様。お待ちしておりました。」
頭を下げてお出迎えの挨拶をすると、大きくて優しい手が僕の腕を捉えた。
「そんな挨拶は要らないっていつも言ってるじゃないか、牡丹。」
顔を上げると少し困り顔の笑顔が僕を優しく見詰めていた。
幸神 幸宏(こうがみ ゆきひろ)。
彼は大きな建設会社の若社長だと誰かに聞いた事がある。
ここの顧客はそれなりの地位と財産が無いとなれない。
だから幸神さんもそれなりの人なんだとは思ってたけど。
もしこの店に居なかったらきっと出会ってなかっただろうと思うと少し不思議な気持ちになる。
「一応、形式なんで。今日も会えて嬉しいです。」
素直に気持ちを伝えて抱き着くと幸神さんが優しく抱き留めてくれた。
「そんな可愛い事言って。僕だけにそう言ってくれてるって勘違いしてしまいそうだよ。」
少し切なそうに呟く声に僕も切なくなる。
僕にはほぼ幸神さんだけと言っていいほどお客様が付いてない。
だからこんな事言えるのも幸神さんだけなのに・・・
でも幸神さんからしたら僕は数居る男娼の1人で、お客様もたくさん居るんだって思ってるんだろう。
これ以上否定しても信じてもらえないだろうから僕は言いたい言葉を飲み込んで幸神さんに身体を預けた。
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