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第9話
「何かちょっと出ない間に風景が変わったなぁ。」
「飲食店は入れ替わりが激しいからな。」
花街の象徴の大きな門を潜った先は、レストランやカフェなんかが建ち並ぶ飲食店街で、昔からある店と新しいオシャレなお店が軒を並べていた。
「響はここ通るのどのくらいぶり?」
僕より頭一つ上にある響の顔を見ながら聞く。
初めてあった時はそんなに身長変わらなかったのに・・・
自分の成長の遅さにちょっとだけ凹む。
「俺は時々楼主様のお使いで出てるからな。この前出たのは・・・1週間くらい前だな。」
つい最近ここを響が通った事に驚いて足を止める。
連れて響の足も止まった。
「何の・・・お使い?楼主の?」
「いや、楓さんの用事で。」
響の言葉にまた驚かされた。
楓さんとは『椿楼』のNo.1の男娼で、僕もあまりお目にかかれない人なのに。
どうて僕の世話係の響が楓さんのお使いをしてるんだろう?
「何で楓さんの?楓さんの世話係は他にいるじゃない。」
自分でも何でそんなに気になるのか分からないけど、どうしても納得いかなかった。
確かに自分の受け持ちの男娼以外でも世話係が用事を頼まれたりする事はある。
響は僕専任の世話係どけど、僕が雇っている訳じゃない。
あくまでも響達世話係の雇い主は楼主なのだから、楼主から言われたら他の仕事もしなくちゃいけない。
でも・・・
「楓さんには3人も世話係が居るのに何で響だったの?」
聞いた僕に響は何も答えずに歩き出した。
「ちょっと、響!」
「それは話せない。楓さんのプライバシーに関わる事だから。」
慌てて追いかけた僕をチラッ見てそれだけ言うと響はそれ以上何も話してはくれなかった。
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