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第10話
それ以上話してくれない響に話し掛けられなくて、久し振りの外出は無言のままスタートした。
話し掛ければ無視はされないんだろうけど何だか気不味くて辺りを見ながら並んで歩く。
トボトボと歩いてそろそろ気不味さも限界を迎えた頃。
目的地の菓子店へと辿り着いた。
ログハウス風の可愛い外観がとても懐かしくて思わずドアの前で立ち止まって店を眺める。
男娼としてお店に出る前はよく楼主が連れて来てくれていた。
ここのマカロンがお気に入りでよく楼主に強請ってたなぁ。
なんて懐かしんでいると。
「おや?君は・・・牡丹?」
後ろから声がして振り返ると懐かしい笑顔がそこにはあった。
「おじさん!お久し振りです。」
思わず駆け寄った相手はこの『グレンツェン』のご主人だった。
おおらかな性格が現れているふっくらとした体格と笑顔の素敵な店主。
この人の作るお菓子は世界一美味しいと僕は思っている。
「元気そうだね、牡丹。そんな所に立ってないで中に入りなさい。」
ドアを開けながら言うご主人に促されて響と店内に足を踏み入れた。
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