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第11話
久し振りに足を踏み入れた店内を見渡す。
木材を基調として落ち着いた雰囲気が店主のセンスの良さを伺わせる。
そうなに広くない店にある存在感があり過ぎるショーケースの中には和洋折衷様々なお菓子が綺麗に並べられていた。
「うわぁ~綺麗・・・」
宝石箱のようにキラキラした可愛らしいお菓子が並べられたケースの中を食い入るように見詰める。
どれも繊細でオシャレで食べるのが勿体無いと思う。
「店主、楼主様から注文があったと思うんですが。」
ワクワクしながらお菓子を眺める僕をよそに響が本来の目的を口にする。
「あぁ、出来てるよ。ちょっと待ってな。」
そう言うと店主は店の奥へと商品を取りに行った。
僕は相変わらずケースを覗き込んでは、このお菓子はどんな味なのかな?なんて想像していた。
小さい頃、楼主とよくこの店を訪れていた時。
僕は今と変わらずケースにへばりついてお菓子を見詰めてた。
そんな僕を見兼ねて楼主は毎回、1個だけお菓子を買ってくれていた。
普通の家庭とは違う環境で育った僕にとって、この『グレンツェン』のお菓子は唯一の楽しみだったんだ。
「食べたいのか?」
不意に聞かれて視線をお菓子から響へ移す。
「・・・うん。」
「1個だけなら。楼主様から許可は貰ってる。」
その言葉に僕のテンションは一気に浮上した。
昔から1個だけを選ぶのにかなり迷う。
でもあれにしようか?これにしようか?って悩むのもまた楽しいんだ。
響の言葉に頷くと僕の視線はまたショーケースへと戻る。
久し振りに来たから真新しいお菓子たちのドキドキとワクワクが止まらない。
「ゆっくり選べ。」
響の言葉に甘えて僕は目移りしながらご褒美級の1個のお菓子を選んでいた。
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