114 / 130
第13話
適当に選んだケーキが来るのをワクワクしながら待っている綺麗な人の横顔を見詰める。
色白で二重の大きな瞳に筋の通った鼻。
お化粧はしてないだろうに薄らとピンクに染まった少し小さめのぷっくりとした唇。
けっして小柄じゃないのに女性かと見紛うばかりの美貌にまた見蕩れていると。
「決まったのか?」
背後から声がして隣の綺麗な人と同じタイミングで振り返る。
そこには高級なスーツに身を包んだ長身の男性がこちらに歩み寄りながら聞いてきた。
「伊織さん。」
横の美人の顔がパッと輝いて歩み寄る男に綺麗な笑顔を向けた。
「手土産は決まったのか?楽都。」
「うん。彼が一緒に選んでくれたんだ。」
その言葉に男の視線が僕に向けられる。
その瞬間。
僕は得体のしれない者に捕らわれた。
男の視線が美人から僕に向く。
ちゃんと真正面から見たその人の顔は驚く程整っていた。
隣の美人もとても整った顔をしていたけど、また違う『男の色気』が漂う顔は見る者を引き寄せる危険な香りを孕んでいた。
「お待たせしました。」
店員の声に支払いを済ませた美人が僕の前に立つ。
「ケーキ選んでくれてありがとう。じゃあね。」
小さな袋を受け取りながらそう言うと微笑んで男と2人店を出ていく。
その後ろ姿を僕は夢現の中で見送った。
ともだちにシェアしよう!