116 / 130

第2話

静まり返った室内。 外は賑やかな筈なのに防音効果の高いこの空間にはそんな喧騒は聞こえて来ない。 存在感あり過ぎな大きなベッドに眠る愛しい人を起こさないようにシーツの海を抜け出すと軽くシャワーで色んなモノを洗い流す。 サイズの合わないバスローブを羽織ってキッチンへ行くと冷蔵庫からよく冷えたミネラルウォーターを火照った体に一気に流し込んだ。 「起きてたのか?」 「気配消して抱き付くの辞めて下さい。心臓に悪い。」 背中に感じる温もりと腰に絡んだ腕の優しさに安心する。 「だったら黙って居なくなるな。」 「シャワー浴びただけだけど?」 「それでも、だ。一秒も離れるな。」 そんな横暴なセリフでも愛しい人に言われると嬉しい。 そう思ってしまうんだから相当病んでるんだと自分でも笑える。 「ほら、今日も仕事なんだから。離してっ・・・んっ・・・」 顎を掴まれて無理矢理自分の方を向かせた癖に、視線が絡む前に塞がれた唇。 こじ開けられて捩じ込まれた舌がミネラルウォーターで冷まされた体を火照らせる。 「仕事には送っていく。だからもう少し俺の腕の中に居ろ。」 そんな甘い言葉に逆らえる訳もなく。 せっかくシャワーを浴びてサッパリしたのにまた大きなベッドに逆戻りさせられてしまう。 それが嫌じゃない辺り、もう末期なんだなぁと冷静に思ってしまっていた。

ともだちにシェアしよう!