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第5話

「何か楽しそうですね?」 「そう?」 私物をロッカーに仕舞いながら掛けられた声に軽く返事をした。 控え室にある大きな姿見で今日の自分をチェックする。 彼の選んでくれたスーツにプレゼントされたネクタイ。 彼好みの香水にお揃いの時計。 それら全てが僕を引き立たせてくれる。 「今日も完璧ですね。さすがNo.1。」 「褒めたって何も出ないよ。」 「そんなんじゃ無いですよ。本当に楽都さんは完璧ですね。」 それはそうだ。 だってそういう風にしてるんだから。 全ては彼の為。 僕の世界の全ては彼で出来ていて、彼が求めるなら僕は何でも出来る。 「さぁ、今日もお客様を楽しませよう。」 後輩の肩を軽く叩いて控え室を後にした。

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