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第6話

軽いミーティングを終えて時刻は18時。 華やかな時間が始まった。 「楽都さん、ご指名です。」 黒服に呼ばれてテーブルに着く。 「ようこそ、BLUE ROSEへ。楽都です。」 「久し振り、楽都。」 黒い革張りのソファーに座るのは今夜最初のお客様。 「彩香さん、今日もお綺麗ですね。」 「またまたぁ~。楽都に言われたら嫌味にしか聞こえないわよ。」 隣に腰を下ろすと彩香さんは僕の方を向いて微笑む。 ヘルプに付いた新米ホストにお酒を作って貰ってグラスを合わせる。 何気無い事や仕事の愚痴、友達と行った旅行の話を時々相槌を打ちながら聞く。 「楽都と居ると時間を忘れちゃうわ。ちょっとトイレ。」 笑顔のまま席を立つ彩香さんを見送って黒服を呼ぶ。 明後日は彩香さんの誕生日。 前にそんな話をしていたから店に来る前に買っておいたケーキを持って来るように頼む。 彼女は有名企業のご令嬢。 美貌も然る事乍ら才能も恵まれていて、たかが創業者の孫娘ってだけではなくその経営能力を遺憾無く発揮していた。 親の会社は勿論、自分の立ち上げたアパレルブランドは世間一般に疎い僕の耳にも届いている。 「おかえりなさい。」 席に帰って来た彩香さんを立ち上がって迎えると優雅に歩く姿が様になっていて思わず見蕩れてしまう。 「あら?これは?」 席に戻った彩香さんの瞳がテーブルの上で止まる。 「もうすぐお誕生日だって聞いたから。」 視線の先にあったのは花柄が美しいガラスの皿に載せられたイチゴたっぷりのショートケーキだった。

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