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第8話

今日の営業も半ばを過ぎた頃。 重厚な店のドアが黒服によって開けられた。 ドアに取り付けられたクラシカルなベルが来客を告げる。 フロアマネージャーに出迎えられてお客様が席へと案内され、それと同時に接客していた僕の所に黒服がやって来た。 「失礼します。楽都さん、ご指名です。」 「分かった。すみません、失礼します。」 先に来ていたお客様に断って席を立つ。 黒服に案内されて向かったのは特別なお客様だけしか入る事が出来ないVIPルームだった。 『BLUE ROSE』は高級会員制ホストクラブなだけあって誰でもが入れる店ではない。 厳正な審査をパスした会員、もしくはその会員が連れて来たお客様しか入店出来ないのだ。 その中でも一部の人しか利用出来ないのがこのVIPルームで、全会員の1割弱しか利用を許可されていない。 だから今日来られたお客様は超VIPだと言う事になる。 他の大きなフロアとは異なり壁で区切られた部屋。 薄灰色の壁にそぐわない赤い革張りのドアの前で深呼吸を一つする。 この部屋を利用するだいたいがオーナーの知り合いなのもあって妙な緊張感が僕を包んでいた。 「失礼します。」 声を掛けドアを開く。 中からは独特な雰囲気が醸し出されて思わず立ち止まりそうな足を何とか動かして部屋の中へと入った。

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