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第13話

それからは毎日毎日、数人の大人達が入れ代わり立ち代わり我が家を訪れては僕を弄んだ。 時にはグロテスクな玩具で、時には1度に数人で。 父親との時より劣悪になった環境にもう僕の頭の中は絶望しか浮かんでこなかった。 この時の僕は『誰か助けて』と望むより『死にたい』と思うようになっていて。 父親の隙をついては2階の窓から飛び降りてみたり、風呂場で手首を切ったり悪足掻きを繰り返していた。 そんな事をし過ぎて2階だった僕の部屋は1階の物置になり、ドアには外から鍵が取り付けられた。 常に父親の監視下に置かれ、トイレも風呂も父親が常に着いてくる。 そんな異常な事が僕の日常になってしまった。 自分で招いた日常。 それを恨む余裕さえ僕には残されてはいなかった。 そんな生活がどのくらい続いただろう。 ある日、1人の男の訪問が幸か不幸か僕を歪な日常から引きずり出す結果となった。 「楽都、初めまして。」 窓もない物置のドアを開けて入ってきた男は物腰の柔らかな口調で僕にそう囁きかける。 心も体も疲れ切っていた僕はそれに返事をする気力さえも残ってなくて、男達の吐き出した欲に汚れた裸体を横たえたまま入口に立つ男を目線だけで見上げた。 「随分汚れてますが顔立ちはとても綺麗ですね。樹、彼を車へ。」 突然の出来事に抗う事も出来なくて、樹と呼ばれたガタイのいい男がゆっくり近付いて来て近くにあった毛布で僕の身体を包むと軽々持ち上げて歩き出しても僕はされるがまま大人しくしていた。 「彼は貰い受けます。それでは。」 愛想笑いを浮かべる父親が目に入る。 その時、僕は悟ったんだ。 『僕は父親に売られたんだ』と。 それが救なのか、また地獄に突き落とされるのか。 あの時の僕にはどっちでも良かった。 これで死ねるのかも。 それだけが頭の中を支配していた。

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