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第11話
突然首筋を軽く吸われ、自分でも聞いたことのない甘い声が漏れた。
先ほどまでとは違う震えが、全身を駆け巡り「隆義 さん」と囁く彼の声に身体の力が一気に抜ける。
立っていられなくなった私を受け止めきれずに、彼とふたりで玄関に倒れ込んだ。
頭をぶつけないようにと気遣ってくれたその手は、倒れ込んだ後でも離れることはなく、優しく頭を撫でられる。
彼の指先は熱いのに、玄関の床はひんやりとしていて、それもまた私をおかしくさせた。指先の輪郭がはっきりし、私にどのように触れているのかが嫌でも伝わってくる。
全てが優しくて、触れられる度に呼吸を忘れてしまうようだ。
重なる視線がたまらなく恥ずかしく、この状況はなんだか惨めでもあり、それでもそれ以上に嬉しくもある。……ああ、何が友人だ。
「俺、あなたが開けてくれただけで、舞い上がりそうなくらいに嬉しかったんです。というかもう、かなり浮かれていますけど」
「なんだってこんなこと。……友人だとそう言っていたのに」
「……ね、そう言ったくせにこんなことして。俺ってダメですね」
私の頭を撫でていた指先が、名残惜しそうに離れてた。
自分で指摘したくせに、まさか離れていくとは思っていなかったから、驚いて顔を上げると彼も「え?」と驚いた表情で私を見つめた。
「ねえ、隆義 さん。その表情 ってどういう意味?」
彼が私の腰に手を回し、ぐっと引き寄せられた。
「隆義 さん、教えて」
――どういう意味だ? 私の表情の何が?
そう考える前に、彼に唇を塞がれた。自分からキスをしたくせに、どこか遠慮が含まれたその触れ方になぜかじれったくなってしまう。
どうせならもっと……。って私は、何を。
久しぶりに誰かとこうして触れ合った私は、呼吸することもままならずに何度も彼の背中を叩いた。
少しでも酸素を吸おうと口を開けば、彼の舌を捩じ込まれ、余計に身動きが取れなくなる。
ただ、どうしてか嫌悪感は一切なくて、欲情と興奮、息苦しさばかりが頭を支配し、それに戸惑いながら彼の力の前では意味のない抵抗を繰り返した。
「弘明 くん、やめ……て、」
「はぁ……っ、隆義 さん、俺っ、」
「や……」
唇が離れたかと思えば、耳をねっとりと舐め上げられる。私の何が彼をここまで刺激してしまったのか。
指先は熱を帯びたまま、私のうなじにそっと触れる。
――熱い。
私の上に馬乗りになった彼は、服を着たままでもはっきりと形が分かる自身を私のそれにぐりぐりと押し付けた。
自分でも触れる回数が減っていた私のそれが勃ち上がるまでに時間を要することはなく、あまりの恥ずかしさに腕で目元を隠す。
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