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第12話
「ダメ。可愛いから全部見せてください」
「あっ……」
腕を掴まれ、開けた視界に入ってきたのは、彼の火照った頬と、潤んだ瞳、滴る汗、額に張り付いた髪。
誰が見ても分かる。彼は今、私に興奮している。
「友人だって、言ったのに。なん、で、こんなこと」
「うん、言った。言ったんですけど、隆義 さん、あなたが可愛いから」
「可愛いって、どうして、ありえない……っ」
「ごめんなさい、俺、もう我慢できないです」
ベルトを外し、それからファスナーを下げる音がしつこく耳に響いた。グレーのパンツには既に染みができており、彼の余裕のなさがさらに際立つ。
ズボンが一枚なくなっただけで、より彼の形が分かった。触れなくても硬さは伝わるし、何より想像していたよりも大きいそれに、私も興奮してしまう。
私に触れて、こうなっているってこと……?
「隆義 さんのも、俺に見せて」
「いや、……あっ、」
彼のようにベルトが必要なズボンを穿いているわけもないから、パンツごとあっけなく脱がされた。
それが膝下に中途半端に引っかかっているせいで、ますます身体の自由がきかない。
「良かった。あなたのも勃っているし、ほら……」
「うあ……っ」
「隠さないで、ちゃんと見せてください」
彼のパンツの染みとは比較にならないほどの先走りを見て、頭が真っ白になった。
少し指が当たるだけでさらに下半身に熱が集まっていく。
年下の彼の前で、抵抗できずにこんな醜態を晒して、これ以上どうしたら良いのか。
先端をつんと指先で弾かれ、それだけで果ててしまいそうな快感が襲う。
「酷いことしないから。ね、擦るだけ」
「ああ……、やめ……っ」
再び口を塞がれた。さきほど同様、息を吸いたくて口を開けば、受け入れてもらえたとそう思ったのか、彼の舌が深くに侵入してくる。
こんな状況なのに快感だけははっきりと自覚できる。どうしてこんなことに……。
「キス、気持ちいですね」
お互いのペニスを擦り付けるように触れながら、彼が何度も刺激する。
裏筋の敏感なところに彼のが擦れて、その気持ち良さにさらに反応してしまい、そんな自分がみっともなく思えて頭が痛い。
「隆義 さんも、反応してますね、俺ももう、余裕ない……」
「う……、ん、」
匂いが濃くなり、くらくらとしてくる。
「もう少し、キスさせてください。隆義 さんの唇、柔らかいから」と言って、彼が私の下唇を甘噛みしながら引っ張る。
何がもう余裕がないだ。
何が起きているかも、こうしている理由も、彼は分かっているはず。自分がどうして私に触れているのかも。
私は彼の真意も、どうしてこうなったのかも、自分が抵抗しきれない理由も、この先の展開も、何も分からない。ただ快感だけが強くなっていく。
声にならない声を漏らし、何かを伝えることも返事をすることもかなわない。余裕がないのは私のほうだろう。
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