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第24話

 数時間書き続け、無視できないほど空腹になった私はコンビニへと出かけた。  スーパーの惣菜を購入することが多いが、最近は同じ店員さんがレジにいることが多く、じっと見つめられる度に、また買いに来たのかと、そう思われている気がして落ち着かなくなってしまう。だから、次に買い物に行く時は、自炊をする日だと決めている。  (なつめ)さんなら、そんなこと気にしているんですか! と笑い飛ばすのだろうな。私は本当に、どうでもいいことばかり気にして、周囲の人間もそう思っているはずだと、思い込んでしまうことが多い。  自信のなさ、他人からの視線を気にしてしまう癖、これらが些細な日常生活ですら不便にしてしまう。  世界が広がると彼女は言っていたが、何も大きく広げなくとも、こうしてわざわざ遠くのコンビニに行かずに済むくらいにはしたいものだ。……まぁ、いつもと違う景色に触れられて、それはそれで良い体験にはなるけれどね。 「……あれ?」  帰宅すると、ドアノブに紙袋がかかっていた。仲を見れば、サブレやパウンドケーキ、おかき、珈琲など、色々なものが入っている。  甘いものからしょっぱいものまで、しかも私の好きなブランドの珈琲だ。  隙間に入り込んでいたメッセージカードを見ると、隅っこではなく中央に(なつめ)と大きく名前が書かれており、その大きな主張に声を出して笑った。 『私は先生の編集者であり、ファンであり、友人であり、人生の後輩です! 友人ってなんだろう? にこだわるのも良いけれど、友人という存在に絞らなくてもいいんですよ。とにかく先生のペースでね!』  最後には『親友より』と書かれており、こんなふうに私のことを気にかけて、思ってくれている人がいるというだけで、少しの自信になる。  ありがたく思いながら、しばらくそのメッセージカードを眺めていると、上着のポケットの中でメールが届く振動がした。  さすがにこのタイミングは(なつめ)さんではないはずだ。  思わず(なつめ)さんからのカードを握りしめたその手で、恐る恐るメールボックスを開いた。 『今、何していますか?』  絵文字も何もない短い文章。たったこれだけの内容で、私の心をざわつかせる。    すぐに返事をすべきか、しばらくしてから返事をするべきか迷ったけれど、彼が私のことを考えてくれている時に返すべきだろう。  少しの間もあけずに、「今からご飯を食べるところだよ」と返事をした。  玄関の鍵を開けていると、すぐに返信の振動がする。と思ったが、振動は止まずに、それが電話だと分かった。

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