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第35話
「俺、本当に今日はあなたの顔を見たいだけだったのに」
「弘明 くん、」
「我慢できないです。最後までしないから、触れてもいい? 隆義 さん、嫌じゃない?」
「だからその聞き方、ずるいって、」
「ずるいのは、隆義 さんのほうですよ。なんでこんなに可愛いの」
万歳の姿勢で呆気なく服を脱がされる。やはり服を着替えなくて良かったと、期待通りの展開になり、彼の目を見ることができない。
なんとなく胸元を両手で隠すと、その姿を彼に笑われる。
「見られるの恥ずかしい?」
「そりゃあ、……慣れないからね」
「じゃあ俺も脱ぎますね」
そう言って私に跨ったままで彼が服を脱ぐと、綺麗に割れた腹筋が視界に入ってきた。若さだけでそうなっているのではなく、仕事以外の日も鍛えているのだろうとそんなことを思った。
自分のとはあまりにも違うそれに手を伸ばし触れると、手のひらにぴったりと吸い付く。
「最近また鍛えたんですよ」
「そうなんだ」
「あなたにかっこいいと思われたくて」
力を入れたらもっと硬くなりますよと、彼が腹に力を入れてみせる。その姿があまりにも面白く、緊張がほぐれて笑みをこぼせば、彼はまたさらにふざけたポーズをとった。
そうして油断した私の力が抜けるのを待っていたかのように、身体を固定され身動きが取れなくなってしまう。
「おふざけはここまでです。俺はまだこんなにガチガチなのに、隆義 さんは余裕なんだ?」
わざとらしく笑う彼に、柔らかくなってしまったそこを撫でられる。そんなふうに触れられたらすぐにでも反応してしまうのに、彼はそれだけでやめてはくれない。
「隆義 さん、口開けて」
「あ……?」
言われるがままに口を開けると、彼が舌を差し入れ、ねっとりと口内を舐め上げる。歯列や上顎まで触れられ、意識がぼんやりとしてくる中、綺麗な指先を私の頭へと回し、髪を絡めて遊ぶ。
「こっちも」
「あっ……」
あっという間に下も脱がされ、「部屋着は脱がせやすくて良いですね」と彼が笑った。
そう言いながら直接私のペニスに触れる彼の手が温かく、ふと彼を見つめればまた、唇を奪われる。
「俺のも触って」
「ん……っ」
ベルトを外し、ファスナーを下ろす手が少しだけ震えている。それでも服を圧迫していたそれが出されると、彼は私の手をそこへと持って行った。
「うあ……、かた、い……」
「ねぇ、隆義 さん。そんなこと言って煽らないで。あなたのせいでこうなってるのに、もっと大きくさせたいの?」
「や、……そういうわけ、じゃあ……っ、あ」
ああ、この関係は一体なんなのだろう。会いたいと言われ、それを受け入れ、最後までしないものの、こうして熱を帯びた視線を交わしながら、お互いのものに触れている。
柔らかくもない身体を重ねることも、自分自身がみっともない姿にされようとも、それでも私は彼を拒むことができないし、拒みたくもない。
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