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第4話 あ、あまーい!!(雑炊はいい塩梅。)
「ほら、食べれるか?」
「ん~、美味しそうなのに・・・お腹一杯な気もする・・・。」
寝間着に着替えてベットに横たわる真里夜が無意識に腹をさする。その手に舘岡の手が重なる。
「なら、もっと出せば良かったな。」
「!?」
吃驚して、舘岡の顔を見れば真面目な顔をして、真里夜の腹を撫でている。
撫でられ、思わずバスルームでの事を思い出しそうになったが、その前に、真里夜のお腹からぐぅぅぅと小さく音がした。
「くっ・・。ほら、冷える前にどうぞ。」
舘岡は小さく笑うと、サイドテーブルを引き寄た。
真里夜の身体を起し、背中の枕と整える。
用意された食事は、さっぱりとした鶏むねと梅紫蘇の雑穀米の雑炊に、茄子の煮びたし。
「食べさせてやろうか?」
「・・・自分で、食べれるって。」
「そっか。」
くしゃりと髪を撫でられ、真里夜は添えられてた蓮華で、雑炊を掬う。
口に広がった酸味と塩味に、自分の身体がそれを求めてた事に気が付いた。
黙々と食べすすむ真里夜を、ベット横で舘岡はニコニコした顔で見ていた。
「・・・、一口いる?」
雑炊を蓮華で掬い、舘岡にむけると、一瞬吃驚した顔をしたがすんなりと口を開けたので、そのまま口に蓮華を入れる。
「ん、いい塩梅だな。」
「ふふ、自画自賛?」
「ん? 気に入らない味だったか?」
「いや、美味しいよ。この味、好きだ。茄子の煮びたしも、美味しい。」
「だろ? ・・・今、お茶持ってくるわ。」
「ん・・。ありがとう。」
寝室を出て行った舘岡を眺めつつ、残りの雑炊を食べすすめていくい。
舘岡の家に来て驚いたのは、冷蔵庫の中身だった。
ぎっちり、みっちりと常備菜やら、下ごしらえ済みの食材が入れられていた。
独身男性の冷蔵庫なんて、普通アルコールか水が入ってるだけだろう?と、自分の部屋の冷蔵庫の中を思い出す。
真里夜の見た目や雰囲気から、何故か今迄の婚約者候補達は、真里夜に家事全般の役目を当たり前の様に求めた。真里夜も求められれば、その事に応えたいと思ってはいたが、基本お手伝いさんが居た家で、真里夜が自分で家の事をする機会は今まで一切無かったし、一人暮らし始めた時ですら、ワイシャツはクリーニング、食事はケータリングや総菜の出来合いモノで済ませる事が多かった。
むしろ、真里夜が「家庭の味」で思い出すのは、舘岡の料理だった。
高校の時、初めて部屋に行った時に舘岡が真里夜に出したカレーは、市販のルーを使った普通のカレー。具材の大きさもバラバラだったが、真里夜は美味しいと思った。
それから何度か、カレーを食べさせて貰ったが、毎回野菜の大きさや肉が違っているのも真里夜は、好きだった。一度、家でもカレーを食べたいと言ったら、老舗カレー店のスパイスカレーが用意されてから、真里夜は家でカレーを食べたいと言う事は無かった。
最後の一口をすくう。
マメな男だよな・・・。
左薬指の指輪を親指でなぞる。シンプルだけど、少し若い感じのする指輪。
すりすりとなぞると、胸の奥が暖かく感じた。
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