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第5話 見た目は天使
「あ、真里くん! おはよう~。」
「・・・ユウタ。おはよう。」
先日エントランスで泣かれてから、それと無く時間をずらしていたが、今朝ついにユウタと鉢合わせした。エントランスでの事なんて忘れたのか、ユウタはニコニコと近寄って、同じエレベーターへ乗り込んできた。
「真里くん、叔父様が真里くんに会いたいって言ってたよ。」
「え?父さんが・・・?」
「そう。真里くん、叔父様の用意した部屋帰ってないでしょ?連絡も返さないから、僕に連絡来たんだよ~。それに、僕も叔父様と真里くんに報告したい事あるし・・・。」
その言葉に、ズキズキっと蟀谷が締め付けられる気がして視線を下げると、
エレベーターのボタンを押す、ユウタの手にキラリと銀色のリングが光ったのが見える。
「ユウタ・・・それ。」
思わず口にしてしまった言葉を、ユウタはニヤリと嬉しそうに口元をゆがめながら、真里夜に見せつけた。
「あ! コレ?安物なんだけど、彼が・・・ね・・っと、ふふ。叔父様と、真里くんには今度紹介するから。だから、真里くん、今度の食事会はちゃんと参加してね。」
エレベーターを降りる間際に、ユウタの指がスルリと真里夜の左手を撫でて行く。その感触に驚き、手を引っ込めたが先に降りたユウタの背を隠す様に、エレベーターの扉がしまる。
「・・・ユウタ・・!?」
一瞬見えたあの指輪のデザインに、無意識に自分の薬指のリングを指の腹でなぞっていた。
♢♢♢♢
「・・・真里夜? それ、口に合わなかった?」
「え?あ、いや・・・。美味しいよ。」
「そう?なら、良かった。」
丁寧に裏ごしされたポタージュを掬い上げたままだった事に慌てて、口へ運ぶとふわりと優しい味が広がる。真里夜が、ゆっくりと食事を再開した事に、内心ホッとする。
真里夜は普段、感情を表に出すことが無い男だった。
素行不良で、祖父から言い渡された罰は、違う土地での生活だった。
最低限の生活費を渡され、暮らす事になったが、その時のオレは特に不満なんて無かった。
祖父譲りの外見は、金色がかった髪に、アイスグレーの瞳。周囲よりも頭一つとびぬけた身長は、誰もが視線を奪われる。その事を、オレは自覚もしていたし、利用もしていた。
医学、科学の進歩したこの時代。妊娠は性別を気にすること無く可能となり、性別は関係無かった。幼い頃から、性的対象として見られる事になれていたオレは、求められるまま身体は重ねたが100%避妊のセーフティーセックス。それでも、日替わりで求められる。
だから、場所が変わっただけだと思っていた。
実際、アイツ・・・真里夜に出会った頃のオレは何も変わっていなかった。
時期外れの転校生だったオレを、クラスメイトは最初は遠巻きに見ていたが、一歩学校の外に出れば、面白い程に人が釣れた。用意された部屋には、着替えに帰るだけだった。
それが、アイツ。加賀真里夜と同じクラスになってからは一変した。
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