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第7話 毎日・・・。
ゲホッ
洗面台で、口をゆすぐ。青白い顔をした、自分の姿に思わず溜息がでる。
手にしてた、陰性を示したスティックをゴミ箱へ捨てフロアへ戻ろうとするが、思わずふらついて壁にもたれかかってしまう。
「・・・やっぱ、新薬の方が良いのかなぁ。」
スーツのポケットに入っていた、空になった薬袋を握り絞める。
妊娠する為には、妊娠薬の毎日の服用と共に相手の遺伝子を体内に取り込む事が条件だった。
再会してから、ほぼ毎晩の様に求められ、寝る直前までキスをし合う。
だから、もしかしたら・・・と真里夜は期待してしまった。
期待なんかしなければ、良かった。今なら、そう思う。
ふぅ・・・。
通りかかった同僚が、心配そうに声を掛けてきた。
「オイ、加賀。お前、顔色悪くないか?」
「え・・・?そうかな?」
「唇も、色変だし。病院行って来いよ。部長には伝えとくし。」
「・・・悪いな。そうす・・・・る・・・・。」
「か、加賀?!!!!」
周りの音が遠退いていく。
倒れる、そう思った時には既に真里夜の意識は無かった。
真里夜の産みの親は、父の大学の後輩だった。
父と産みの親は、同性婚で加賀製薬(うち)の妊娠薬の被験者でもあった。
二度、三度と妊娠を試みて、四度目でやっと妊娠して産まれたのが、真里夜だった。
体質なのか、無事に妊娠出来ても途中でアレルギー反応を起してしまい、流れてしまっていた中での、真里夜の誕生は二人にとっても、祖父にとっても喜ばしい事だった。
けれど、産後の肥立ちがあまり良くない中での第二子妊活中に真里夜の産みの親は亡くなってしまった。
それからの父は、妊娠薬の改良に没頭していった。
今では、副作用の少ない従来よりも期間の長い低量の妊娠薬も開発され、色々な妊娠薬が出回る様になっていた。
「今、なんて・・・。」
「・・・加賀さん。お気持ちは残念ですが・・・」
運びこまれた病院のベットの上で、手渡された結果に真里夜は顔色を無くした。
「今日は、点滴が終わったら帰って頂いて大丈夫ですので・・・今後の事は、パートナーの方と良く相談をされる事をおすすめ致します。」
ゆっくりと落ちる点滴に、いい様の無い涙が真里夜はこみ上げた。
頬を伝う涙を拭うと、視界に舘岡に貰った指輪が映る。
・・・舘岡。
「・・・別れないと・・・な・・・。」
「ハッ? 真里夜、どういう事だ?」
「えっ・・・た、舘岡?」
仕切られていたカーテンが勢い良く開かれ、舘岡が真里夜が寝かされていた、ベットへと近寄る。
「な・・・なんで・・?」
「真里夜の会社の人から連絡貰って・・・。真里夜がココに運ばれたって、ってか・・・別れる。ってどういう事だ・・・?」
「そ・・それは・・・。」
「はぁ・・・。点滴終わったみたいだし、帰ろうか。」
ナースコールを押しながら、真里夜の頬を撫でた。その優しい手付きに真里夜の止まった筈の涙がまた零れ落ちた。
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