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第18話 十一月某日【約束】蓮見

 制服も下着も脱ぎ捨てた俺たちは、寒いから布団の中で裸で抱き合う。 「先輩、かわいい」  鴫野の鼻先が首筋を撫でて、鴫野の温度の唇が柔らかく触れる。くすぐったい。 「お前、ひとりでした?」 「しました」  俺の質問に素直に答える鴫野。吐息混じりの声と、唇と舌が皮膚の薄い場所をくすぐる。首筋から胸に這い降りた鴫野の唇がすっかり尖った乳首を舐る。 「っ、どう、だった?」 「先輩とした方が気持ちよかったっす」  即答すんのかよ。まあ、いいけど。 「先輩は?」  すっかり硬くなった乳首を舌先で撫で、鴫野が俺を見上げる。 「俺も」  そんなの、当たり前だろ。  文化祭の後にしたのが最後で、それ以来一人で慰めていた俺の身体はそろそろ限界だった。乳首ばかり執拗に舐めしゃぶられて、物足りなさに胎が疼く。 「いい子にしてたみたいだな鴫野」  鴫野の頭を撫でると、鴫野は喉を鳴らした。 「先輩、それ、反則」  鴫野の声が欲情で濡れて、俺の身体は期待を募らせ勝手に熱くなる。 「先輩、すき」  鴫野は俺の平らな胸板にキスをして、乳首を捏ねる。そっちじゃなくて、早くちんこ触れよ。 「ん、おれ、も、好き、しぎの」  はしたないとわかっているのに、硬くなったちんこを鴫野に押し付けてしまう。 「先輩、寂しくなかったすか」 「……寂しかったよ」 「よかった、俺も」  ようやく気付いたのか、鴫野の手がすっかり芯を持って反り返る俺のちんこに触れた。  やんわりと、鴫野の大きくて骨張った手のひらが包み込むみたいに撫でる。肉感の薄い手のひらは、鴫野の昂りを物語るように熱い。それにまた、俺の身体は熱を上げる。 「先輩なら、きっと受かりますよ」  こいつが言うならいけるかもと思ってしまうあたり、俺も大概単純なのかもしれない。 「合格したら、デートしましょ」 「はは」  思わず笑ってしまった。  なんだよ、デートしたいのかよ。  そういえば、鴫野とはデートらしいデートはしたことがなかった。 「なんすか」  鴫野は少し怒ったのか、唇をへの字にした。怒るなよ。お前、結構そういうの好きなんだな。 「いいよ」  したくないわけじゃないから、受かって時間ができたら、どこでもいいからどこかに行こう。 「受かったら、な」  勿体ぶるわけじゃないけど、受からないと、安心できない。進路指導室の先生にも多分大丈夫だと言われたけど。 「絶対、受かって、先輩」  熱っぽい声が降ってきて、俺は鴫野を見上げる。火傷しそうな熱を孕んだ、縋るような視線が俺を射抜く。 「なあ、鴫野」  心臓が煩く鳴り響いて、声が掠れる。 「いきたい」  俺は先走りをだらしなく垂らす自身を鴫野の手のひらに擦り付ける。熱い手のひらに裏筋が擦れて、またカウパーがだらだらと溢れる。  鴫野は息を飲んだ。 「……ッス」  鴫野の手がしっかりと俺のちんこを握り込んで、上下に動く。 「ん、ゅ」  気持ちよくて腰が勝手に揺れる。はしたなく腰を振るのを見られるのは恥ずかしいのに、湧き上がる快感には勝てなくて、鴫野の手の動きに合わせて無様に腰を揺らす。すっかり先走りで濡れそぼったそこからは、鴫野が擦るのに合わせて濡れた音が立つ。その音さえ俺を昂らせる。鴫野に触れられて与えられるもの、全てが快感に繋がっていた。 「しぎ、の」 「先輩、いきそ?」  鴫野の甘ったるい声がこちらを伺う。鴫野の手の中でもう何度もびくびくと跳ねている俺のは限界が近い。 「ん」  頷くと、鴫野の手は今までよりも強く、緩急をつけた動きで俺を翻弄する。 「ぅあ、いく、しぎ、の、ぁ」  俺のものを扱く鴫野の手に合わせて腰を振って、快感を貪る。  熱い精液が上がってくる感じに、思わず喉から上擦った声が漏れた。  大きく脈打ち、熱い白濁が何度も散る。胸から腹にかけて、ぱたぱたと白い飛沫が落ちる。  余韻に腰を震わせる俺は、鴫野の手に縋るように手を重ねた。程よい圧をかけて、根本から先端まで一滴残さず絞り出すように動く鴫野の手は、いったばかりで敏感になり過ぎている俺には過ぎた刺激で、声も出せなかった。 「ゴム、つけたらよかったっすね」  鴫野のは俺の出したザーメン塗れの手を舐めた後、ティッシュで丁寧に拭いてくれた。ようやく解放された俺はされるがまま、シーツに身体を投げ出して余韻の海をゆらゆらと揺蕩う。  ぼんやりしている俺に戯れるみたいな触れるだけのキスをして、ゴムをつけた鴫野はようやく俺の中に入ってきた。  ろくに触ってないのに、鴫野は臨戦体勢だった。  ゆっくり俺の中を拓いていくエグい雁首とか、血管の浮いた幹とか、投げてよこす縋るような視線とか。全部が愛おしい。こんなに愛情を向けられるのが気持ちいいなんて知らなかったし、多幸感で溶け出しそうなくらい、頭の中も身体も鴫野でいっぱいだった。 「なか、きもちい」  俺はそれを享受するだけで、俺ばかり気持ちいいんじゃ申し訳なくて鴫野を見上げた。 「先輩、中、やばい」  眉間に皺を寄せて、何かに耐えるような鴫野。あぁこいつも、ちゃんと気持ちいいんだな。  ひくつく中は甘えるみたいに鴫野を締め付けて、俺の中に鴫野のかたちを鮮明に浮き上がらせた。  鴫野を身体ごと引き寄せて頭を抱えて、耳にやんわり歯を立てた。 「っく、せんぱ、いく、から、っあ」  鴫野が身体を震わせた。 「っ、もっと、ぐちゃぐちゃにしろよ」  中で鴫野が脈打って、熱いものを吐き出すのを感じる。息を詰めて射精する鴫野の耳元に、わざと甘えた声を吹き込んでやると。 「もー、煽りすぎっすよ、あんた」  鴫野は俺を剥がすとシーツに押し付けた。 「あ、ぅ」  今しがたいったのに、まだ萎えていない鴫野が中で動くと、それだけで快感が生まれて俺は無様に喘ぐしかなかった。  少しくらい酷くしてもいいのに、鴫野は馬鹿みたいに丁寧に俺に触れて、俺を拓いていく。 「っ、くそ、おまえ、丁寧、すぎ」  もっと雑でも壊れないのに。  鴫野を睨むと、眉を下げた鴫野は謝るでもなく、申し訳なさそうに言った。 「俺がしたいんすよ。できれば、ずっとあんたとこうしてたい」  奥まで捩じ込むのもゆっくり様子を伺うみたいにするから、焦れったくて声を上げそうになる。  それで奥を叩かれると、もうだめだった。とんとんと伺うみたいに叩かれ、ねだるみたいに捏ねられて、もっと奥に欲しくなってしまう。まだ誰も知らない、俺の一番奥まで。  かと思えばねっとりと腰を引かれて、中が引き止めるみたいに縋り付く。抜けるギリギリまで引かれて、またゆっくり奥まで入ってくる。  中は勝手に波打って、鴫野を締め付ける。  もう俺の意思なんか関係なく、感じすぎる俺の身体はずっと気持ちよくて、久しぶりの俺はすぐに意識を飛ばしてしまった。  気がつくと部屋は暗くなっていて、ベッドサイドのスタンドの明かりがあるだけだった。 「先輩」  鴫野の声がした方を見上げる。  心配そうな顔をした鴫野が俺を覗き込んでいた。 「起きました?」 「ん」  いつの間にか気絶していたらしい。まぁ、あんな気持ちいいんだから仕方ない。久しぶりだったし。 「片付けしてあるんで」 「さんきゅ」  寝起きのぼんやりした俺を、鴫野が抱きしめる。あったかい鴫野の身体が気持ちよくて、鴫野の背中に腕を回した。  落ち着く。鴫野の温度が側にあるのが堪らなく嬉しくて、抱きつく腕に力を込めた。  鴫野の手が、頭を撫でてくれる。終わった後のこういうところ、めちゃくちゃ好きだった。 「合格発表、いつすか」  頭を撫でながら、鴫野は穏やかな声で言う。甘さの残る低音は、少し眠そうだった。 「来月頭」 「じゃあ、それからっすね」 「なにが」 「デート、すよ」 「ふは」  思わず笑ってしまった。  そんなにデートしたいなら、してやろう。鴫野の行きたいところに、一緒に行く。そうしよう。 「なんすか」  俺に笑われたのが不服だったようで、不貞腐れたような鴫野の声が聞こえた。 「楽しみにしてるよ。どこ行くか、考えとけよ」 「……ッス」  こいつと行くなら、きっとどこになっても悪くないと、そう思った。  額を擦り付けた胸板は、温かかった。

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