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第20話 十二月某日【奥まで】蓮見
「俺も、触っていいすか」
「いいよ」
鴫野の指先が、壊れ物を触るみたいにそっと首筋に触れた。思わず息を飲む。胸に這い降りて、熱い手のひらがうっすらと上下する胸板を撫でる。
指先が悪戯に乳暈を掠めるたびに、俺の喉からは物欲しげな声が漏れてしまう。
「っ、う」
それに気付いているのか、鴫野は一向に胸で震える肉粒には触れてこない。
「しぎの」
思わず呼んでしまった。
「ここ、すよね」
わかってるなら早くしろよ、バカ。
そんなふうに心の中で悪態をつく。
「あう」
代わりに口から漏れたのは、間の抜けた喘ぎだった。
鴫野の指が、胸の肉粒を優しく捏ねる。
ぴりぴりと弱い電気のような快感が全身に散っていく。
つまんで押し潰して、指先に挟んで捏ねられると、思わず腰を揺らしてしまう。
見なくてもわかる。下腹ではうっすらと芯を持った性器が頭を擡げている。
もう、頭の中はもっと気持ち良くなることしか考えられない。
「しぎの」
甘ったれた声に、鴫野は笑みを返して、その唇が胸に触れた。
「は、ぁ」
唇と舌のぬるりとした感触が、とろけそうな弾力が、乳首を包んでため息が漏れた。そのまま唾液をまぶされて捏ねられ、吸われて、俺の口からはひっきりなしに甘い声が漏れるだけだった。口でしてもらえない方は指先で丁寧に愛されて、声が止まらない。気持ちよくて、嬉しくて、泣きそうだった。
鴫野を見下ろすと、俺を見上げる鴫野と視線がかち合う。
鴫野は笑うみたいに優しく目を細めた。
胸を交互に舐められ、吸われて、俺のちんこはもう完勃ちだった。垂れた先走りで、腹も下生えも濡れているのがわかる。
「先輩」
鴫野が胸から唇を離した。濡れた乳首がひやりとして思わず背が震えた。
「一緒にして、いいすか」
一瞬何のことか分からなかった俺は、すっかり勃ち上がったそれに重ねられた熱いものに過剰に反応して身体を震わせた。
見れば、バキバキになった鴫野のちんこが俺のそれにぴったりと重ねられて鴫野に二本まとめて握られていた。
「うそ」
「嘘じゃねーすよ。あんたがかわいい声出すから、もうこんな状態」
「だって、気持ちわりーだろ」
「ねえ、あんた、そんなかわいい声出しといて、何言ってんの?」
少し怒ったような鴫野の声。なんで怒ってるんだよ。正気か?
「もう、俺の、ガチガチなんだけど」
濡れた音とともに擦り付けられる熱に、俺は声も上げられずただ喉を鳴らした。そんなことされたら、鴫野が俺に欲情してると嫌でもわかる。しかもそれが嬉しいと思ってしまうあたり、俺はすっかり鴫野に夢中なんだと思い知らされる。
「あんたの声で萎えるとか、ないから」
鴫野の手に扱かれると溶けてしまいそうな気持ちよさで、俺は力なく喘ぐしかできなかった。
「しぎの、いく、から」
そうだ、ゴムもつけてない。
生で触れ合う感覚は眩暈がするほど気持ちいい。直接幹が擦れて、裏筋が擦れて、先走りが止まらない。
「拭くから、出していいっすよ」
ならいいか、と快感に埋め尽くされた頭の隅で思って、俺は鴫野の手の中で果てた。
「っ、く」
鴫野もいった。
自分の出したのとは違う熱いものが腹に散る。俺のとは違うタイミングで鴫野が脈打つのがわかる。
二人分の精液で、俺の腹の上はドロドロだった。臍の窪みに、白い水溜まりができている。
鴫野はティッシュを取って丁寧に拭いてくれた。
「先輩、まだ、いけます?」
「ん」
身体を起こして丁寧に後始末をした鴫野は、俺の上から退いて俺の足を広げてその間に腰を下ろした。
足を開いた俺は全部鴫野に晒すことになる。
射精後の萎れて横たわるちんこも、その下に息づく窄まりも、全部。恥ずかしいのに、嫌じゃないからタチが悪い。
鴫野はローションを垂らして窄まりを撫でて、ゆっくりと指を入れた。中を確かめるみたいに出し入れして、拡げて、ローションを足して。それが終わると、俺のと鴫野のにそれぞれゴムをつけた。
鴫野は薄い膜越しの怒張にローションをたっぷりと纏わせてひくつく窄まりに宛てがう。
「んう」
いつも、入ってくるときの異物感には慣れない。おかげで間抜けな声が出てしまう。
「先輩、痛くない?」
だからいつも、鴫野は心配そうに俺を覗き込む。
「ん、へー、き」
俺の返事に鴫野は安心したように笑って、少しずつ奥へと進んでいく。
熱い楔が、俺の胎の中を拓いていく。
眩暈がする。
鴫野のかたちを教えられているみたいに、ゆっくり入ってきて、前立腺を押し込まれる。
「っは、ぁ」
中が反応して鴫野を締め付ける。
反応を楽しむみたいに何度も前立腺を弾かれて、胎はきゅんきゅんと切なく疼く。鴫野を締め上げて、腹の中の鴫野のかたちがよくわかる。鴫野が中でしゃくりあげるのまでわかって、恥ずかしくて、嬉しくて、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「しぎの」
「っあ、おく、すよね」
「ん」
散々待たされた奥の窄まりに、鴫野の先端がこつんと挨拶をする。とんとんと優しく叩いて、俺の奥は甘えるみたいに吸い付く。
「先輩、おく、きもちい?」
「ん」
「これ、もっと奥、あるんすか」
「……あるよ」
わかりやすく鴫野の喉仏が上下する。
それがなんだかかわいくて、俺は鴫野の熱い頬を撫でる。
「この先は、お前がはじめて」
「はぁ?」
「結腸は、入れられたことねーから、ここの初めては、お前にやるよ」
「っ、もー」
「っあ」
鴫野が奥を小突くと、腹がひくひくと震える。
「今度、ゆっくりさせてください」
今日、してもよかったのに。まあ、こいつらしいけど。
「今日は、あんたをちゃんと気持ちよくしたいんすよ」
ばか。なんでそんなこと言うんだよ。
心臓が痛いくらいに騒ぎ出す。
期待で、身体が熱を上げる。胎は甘く疼いて、喜ぶみたいに鴫野を締め付けてしまう。
そして俺は、鴫野の宣言通り、きっちり気持ちよくされた。
「っしぎ、の、も、やだ」
今まで鴫野とした中で一番気持ちよくて、馬鹿みたいに喘いで、泣いて、いきまくった。
もう何回いったのか覚えていない。ゴムには精液やら潮やらが溜まって垂れ下がっていた。もう替えたいのに、気持ちよくてそちらにまで気が回らない。
「気持ちよくないすか?」
「んう、ちが、よすぎ、て」
「ならよかった」
こいつ、人の話、聞いてる?
中をゆっくりと擦られて、どこを擦られてもずっと気持ちよくて、頭がおかしくなりそうだった。
震える完勃ちのちんこは重たそうなゴムを垂らして震えていた。
足はだらしなく広がって、勝手に震える。
「きもちい、しぎの、きもちい、やばい」
譫言みたいに繰り返すことしかできなかった。
「へん、なるぅ」
もう呂律も回らない。辛うじて言葉にはなるけど、甘えたような声になってしまう。
「いいっすよ。変になったら、俺が責任とりますから」
こいつ、さらっととんでもないことに言いやがって。
「も、ゴム、替え、ろ、って」
「ほんとだ、たぷたぷっすね」
俺の出したものを溜め込んだゴムを外して片付けると、鴫野は新しいゴムをつけてくれた。
「続き、していい?」
「ん」
俺が頷くと、鴫野は大きなストロークで俺を揺さぶった。
「っあ!」
勝手に声が出る。
「っ、や、あ」
甘えた声が出て、なのに指一本動かせなくて、口を塞ぐこともできず、俺はただ甘えた声を上げ続けた。
「きもちい、っん、しぎ、の、あ」
どうなってんだよ。こいつ、この前まで童貞だろ。
鴫野から絶えず与えられる快感の嵐に、視界が白く弾ける。
俺を見つめる鴫野の表情は、押し殺しきれない欲に染まっているのに、どこか優しかった。
「先輩、いっていい?」
「ん、ぁ、いけ、よ」
力任せな、それでもどこか俺を気遣うような鴫野の動きに俺はまた翻弄されて、鴫野がいくのと同時に、俺も申し訳程度の吐精をした。
気絶こそしなかったものの、終わる頃には息も絶え絶えだった。
全力疾走した後みたいに心臓が脈打っている。 散々射精したせいで身体が怠くて指一本動かしたくなかった。
俺から大人しくなったちんこを引き抜いて、のそのそと後片付けを始めた鴫野を視線だけで追う。
「デート、行くとこ決めたか?」
「あ……、海、とか」
海、ね。
「寒くねーか」
思ったことをそのまま口にすると、鴫野はあからさまに凹んだ顔をする。
「だめすか」
「や、いいよ」
眉を下げた鴫野を見て、そんな顔するなよと思いながら了承した。
「いこうぜ、海。寒かったら、お前があっためてくれるんだろ?」
「……ッス」
鴫野の顔が赤くなった。散々やったのに、今更だと笑ったけれど、俺は俺で楽しみではあった。
週末まであと少し。デートが楽しみだなんて、いつぶりだろう。忘れかけた感覚に、胸があったかくなった。
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