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第27話 十二月某日【かわいい先輩】鴫野
しがみついてくる熱い粘膜を振り切るように腰を引いて、打ち付ける。
肌のぶつかる音がする。荒々しい、獣じみたセックスを、先輩としている。
もう抵抗もできないくらい力の抜けた先輩は、俺にさせるがままになっていた。
握っていた手を離すと寂しそうな顔をするから、触れるだけのキスをして身体を起こした。
投げ出された先輩の脚を抱え上げて一番奥まで届くように、本能に任せて腰を振る。しこたま仕込んだローションがいやらしい音を立てる。肌がぶつかる音とローションが泡立つ音が混ざって、否応無しに興奮を煽る。
「こう」
荒い呼吸の合間に呼べば、先輩は視線だけよこして、ふわりと笑った。
「せんぱい、も、いき、そ」
「ン」
シーツに先輩を押し付けて、力任せに、一番奥まで突き上げる。その度に先輩の中はきつく締まって、はやくいけと言われているみたいだった。
俺は一番奥で射精した。何度も脈打って、吐き出した熱いものが薄い膜の中に溜まっていく。緩く腰を動かすと、先輩の中はきゅうきゅうと締め付けてきて、一滴残らず搾り取られるようだった。
先輩につけたゴムにも、白いものが溜まっていく。先輩がいってるのが嬉しくて、思わずへらりと笑った。
先輩が身体を震わせて射精を終えたのを見計らって、俺は腰を引いた。終わらせるつもりでいた。のに。
「んあ!」
奥から引き抜いたところで、段差が襞を捲り上げて、先輩の身体が跳ね、中がきつく締まる。
「っ、せん、ぱ」
頭のネジが二、三本吹き飛ぶみたいな、濃い快感に頭の中が白飛びした。
吐精で落ち着いたはずの猛りが、先輩の中でまた血を集めて育っていく。
「っ、ちょ、ま、て、って、ぅあ!」
中で、きつい肉の輪に扱かれるみたいで気持ちよくて、俺は小刻みに往復させる。
「っ、ひ、や、ぁ、ッし、ぃの、や、ぇ」
甘い声を上げながら、先輩は喉を晒して、ゴムの中に透明なものを放った。
俺の動きに合わせて先輩は身体を跳ねさせ、中は俺を食いちぎるみたいにきつく締まる。
「や、あ、っぇ、ひ、ぁ」
先輩の口から漏れるのは、悲鳴じみた甘い声。もう言葉の体をなさない、甘ったるい喘ぎ声だった。
苦しさの滲むその声を聞いても俺は止めることができなくて、欲望に任せて腰を打ち付ける。
先輩の中は奥を突くたびに震えて、腰を引くたびにしがみついてくる。陥落した奥の肉襞にきつく亀頭を扱かれて、もう一度、先輩の一番奥に欲望を叩きつけた。
熱いものが、先輩の一番奥で爆ぜた。
先輩はそれに感じ入っているようで、俺をきつく締め上げながら、かわいらしい声でか細く啼いた。
その後めちゃくちゃ怒られた。
「お前、ほんと、いい加減にしろ」
後片付けもそこそこに、布団も毛布も全部奪って団子みたいになって顔だけ出した先輩の前に、俺は全裸で正座していた。
「……ッス」
頭のネジを吹っ飛ばして先輩に無体を働いた俺は、言い返す言葉もない。これはしばらくお預けかもしれない。
「奥まですんの、わけわかんなくなるんだよ、バカ」
「……はい」
先輩の悪態も、黙って受け止める。確かにちょっと苛めすぎた自覚はある。仕方なくね?
蕩けた先輩の顔を思い出して、胸がざわつく。
「……気持ちいいけど、しょっちゅうは、やだ。ケツがバカになりそう」
先輩、言い方。でも、ちゃんと気持ちよくなっててくれてたなら良かったと思う。
「痛くなかったすか」
「痛くはねーけど」
顔が緩んでいたみたいで、睨まれる。
「ぐちゃぐちゃになってるこう先輩、可愛かったです」
本音を言うと、先輩の顔がみるみる赤く染まっていく。
「全部お前のせいだ」
ぼそりと独り言みたいに呟いて、先輩は顔を伏せてしまった。
団子から、先輩の旋毛だけ見える。
「先輩」
「なんだよ」
「もう、ひどくしないから」
「ん」
先輩に近付いて旋毛にそっとキスを落とすと、団子がもぞもぞと動いた。なんだかこういう生き物みたいだ。
そんなことを思っていると、団子が解けた。
胡座をかいた先輩が、そっと俺を引き寄せた。
「ふ、風邪ひくぞ」
先輩に抱きしめられて、毛布に包まれる。
「先輩、あっためてくれます?」
「いいよ」
温かくて柔らかい唇が、俺の唇に触れた。
それだけで、俺の身体は熱くなっていく。深く重なって忍び込んできた熱い舌を受け止めながら、また腹の底から湧いてくる熱に喉を鳴らした。
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