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第28話 十二月某日【もうひとつのクリスマス】蓮見
結腸をがっつり責められた後、俺と鴫野はもう一ラウンド緩めのセックスをした。触れ合ったら触れ合っただけ欲しくなってしまう俺たちは、ベッドの上からしばらく降りられなかった。
その後、鴫野のお母さんが帰ってきて挨拶をした。初対面だけど気さくな人で、なんていうか鴫野の母親だな、って感じがした。
そのまま、三人一緒に晩御飯を食べた。鴫野がどういう説明をしたのか、鴫野が俺を泊めたくて泊めたみたいになっていたので笑った。思ったより歓迎されていて、リップサービスだとしてもいくらでも泊まっていっていいのよと言ってくれて嬉しかった。
食事の後、俺は先に風呂に入って、鴫野の部屋に戻った。
「お待たせしました」
先に風呂を済ませて鴫野のベッドでくつろいでいた俺は、間延びした声とともに部屋に帰ってきた鴫野の顔を見るなり、耳まで真っ赤になった。心臓が、音が聞こえそうなくらい脈打って全身に血を送っている。顔が熱い。顔だけじゃなくて、全身が熱い。
風呂に入る前、鴫野がヒゲ剃らなくてもいいすかと言っていたのでいいよと答えた。それは覚えている。校則ではダメだけど、もう冬休みだ。鴫野は単純に面倒だからそう言ったんだろうけど、俺の意図は違った。ヒゲの鴫野が見られるチャンスをみすみす逃すわけにはいかない。鴫野にヒゲ、絶対似合うと思ったからだ。
「どしたんすか」
俺を見て、呆けた顔をしている鴫野。
「……お前、そのビジュアル、反則だろ」
「は?」
鴫野はまだ状況が飲み込めていないようだった。
やばい。予想はしていたけど、予想以上だった。無精髭と黒髪長髪で緩く波打つ毛先。俺のツボにドンピシャ過ぎてちょっと引く。
「そういうの、俺めちゃくちゃ好きなんだよ」
ヒゲ、長髪、老け顔。俺のツボだった。
長谷川はとにかく顔が良かった。高校生って感じのいい男で、声も良かった。
けど、鴫野はベクトルが違う。見た目だけで言ったら、ほんと理想ど真ん中だった。
今夜、とんでもないモンスターが爆誕したかもしれない。俺の心臓は最後までもってくれるだろうか。
こんなこと言ったら調子に乗るから言わないでおくけど。
「先輩、オッサン好き?」
「オッサンて言うな。そういう見た目が好きなんだよ」
「じゃあ、今日はこれでします?」
鴫野は穏やかに笑った。
もちろん、そのつもりだった。俺は頬を赤らめたまま頷いた。顔が熱い。
見た目は理想の、俺のことを大好きな男が目の前にいるわけで、俺の心臓はさっきからずっと童貞みたいに煩く鳴っていた。
少し早いクリスマスプレゼント、にしては、できすぎているんじゃないかと思う。
ひとりでそわそわしていると、鴫野がベッドに乗り上げて、俺に覆い被さる。
相手が鴫野だとわかっているのに、距離が縮まるだけで、俺の心臓は跳ねた。
「こう先輩、すき」
欲情で濡れたその目に俺を映して、鴫野は絶えず愛の言葉を降らせてくる。俺はただその愛の言葉を享受する。
鴫野の体温を纏った唇が、絶え間なく降ってくる。
「こう先輩」
熱い肌の上を滑る唇から、紡がれた声が肌を撫でていく。無精髭がざらりと肌を擦り、垂れ落ちた毛先が肌を撫でるだけで、肌が震える。
触れられて体温を感じるだけで、くすぐったくて、甘くて、せつない。
「こう先輩?」
「こう、でいいから」
「こう」
そうやって呼ばれるだけで、腹の奥の深いところが疼く。既に二ラウンド終えているはずの俺の身体に再び火がつけられた。
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