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第30話 十二月某日【晒す喜び】蓮見
「こう、入れて、いい?」
「ん」
ゴムをつけて、ローションをたっぷり垂らして、俺の脚の間で準備万端の鴫野に、脚を抱えて、ひくつくアナルを晒す。
「エッロ……」
本能を滲ませた低く唸るような鴫野の声に、俺の身体は素直に反応して胎の奥を疼かせた。
「早く、しろよ」
みっともない格好で全部晒して、鴫野に見られていると思うと恥ずかしいのに、身体は歓喜して甘く疼いた。
先端を押し当てられただけで、身体が喜ぶ。その先にある快感を知っているから、浅ましく欲しがってしまう。
ゆっくりと、鴫野が押し入ってくる。
隘路を拡げて奥へと進む鴫野の熱いものが行き当たりまで進むと、ゆっくりと伺うみたいに出し入れされる。
前立腺を弾かれて、奥の襞を捏ねられて。
すっかり鴫野を受け入れることに慣れた俺の中は簡単に快感を拾って、俺はぐちゃぐちゃにされる。
頭の中はもう、気持ちいいでいっぱいだった。
「こう」
「っ、ぅ」
鴫野のちんこにこちゅんと襞を叩かれて、俺は思わず小さく啼いた。
「気持ちいい?」
「ン」
あれだけ乱されてもうしばらくいらないと思ったのに、俺の身体は貪欲なもので、もう欲しがり始めた。
「みきたか、おく」
「おく、欲しいの?」
鴫野に甘く囁かれ、頷くしかなかった。
また、奥までしてほしい。一番奥まで、突いてほしい。内臓を捏ねられるみたいな、あの感覚がほしい。
「ン」
「いいよ」
鴫野は行き当たりの窄まった襞に先端を押し付けた。それは挨拶みたいで、俺の身体は馬鹿正直に反応する。恥ずかしげもなく期待を滲ませ、鴫野に媚びるみたいに吸い付き始める。
「っ、あ」
「こう、奥、あけて」
鴫野が優しく叩いて、撫で回して、促す。
「ん、う、ぃ、あ」
まだ、最奥が陥落した時の快感は鮮明すぎるくらいに覚えていた。
「こう」
鴫野の、熱のこもった声が鼓膜を震わせた。早く奥に入れさせろと急かされているようで、俺の身体は震えた。
「ひう」
鴫野の張り詰めた先端が、しゃぶりつく肉襞にキスを繰り返す。押し付けて離して、中で何度も何度も濡れた音がする。
「きもちい?」
「ぃ」
ぐちゃぐちゃにされる。気持ちも、身体も。
それが堪らなく嬉しい。
「こう」
一際甘く呼ばれて、脳髄まで蕩けて、身体が緩む。
腹の奥で、濁った音がした。
「ーーッ、ひ」
一番奥に、鴫野が届いた。優しく、力強く、襞をこじ開けていく、張り出した雁首と、逞しい幹。張り詰めた先端が一番奥の柔い肉壁を押し上げる。
内臓を捏ねられるみたいな重苦しい感覚の後に、甘く蕩ける熱がやってきて。
灼かれるような快感が全身を埋め尽くして、やっぱりやり過ごし方がわからなくて。俺は息も上手くできないまま全身をしならせ、突っ張らせて、足先で無様にシーツを掻いた。
うっすら芯を持った俺の性器から、熱い飛沫が散った。
胸の辺りまで熱く濡れて、でもそれを確かめる余裕もなかった。
中に埋まった鴫野の形がよくわかる。俺の意思とは関係なく、中が鴫野を締め上げて、鴫野が息を詰める気配がした。
視界がぼやけて、白い星がいくつも散って弾けた。喉は引き攣って声も出せない。辛うじて細く、浅く、息を吸って、吐く。喉がか細く鳴った。
全身を、快感の荒波が攫っていく。
「っ、こ、う」
吐息のような鴫野の声がした。
「ぁ、ぇ」
声が、言葉が、上手く出てこない。
「こう、大丈夫?」
大きな手が頬に添えられて、鴫野が顔を覗き込む。ひどく安心する。
「トんじゃった?」
「ん、う」
俺が頷いてみせると、鴫野は笑った。
「きもちいね、こう」
鴫野が奥の肉壁をねっとりと捏ねる。それでまた俺の中は甘えるみたいにうねって鴫野を喜ばせる。
「っ、う」
「ね、いっていい?」
「ん」
鴫野が乞うように俺を覗き込むから、俺は頷いた。鴫野が中に熱いものを放つのを感じたかった。
俺の返事を聞いて、鴫野は俺の脚を抱え上げる。俺の身体を折り曲げて、体勢が変わってより深くまで鴫野が入ってくる。
これから始まる荒い快感の嵐に、期待と不安で胸が高鳴る。
ベッドが軋むくらい、鴫野は荒々しく腰を打ち付けた。俺のことなんて少しも気にかけない、浅いところから一番奥まで何もかも蹂躙するみたいなストロークで。
肌のぶつかる音と、繋がった場所でローションが泡立つ音。俺と、鴫野の荒い呼吸の音。ベッドが苦しげに軋む音。絶えず何かの音が鼓膜を震わせる。
中は俺の意思なんか関係なく鴫野を締め上げて、射精を誘う。
中に鴫野の熱い精液をぶちまけてほしい。熱いので、俺の中をいっぱいにしてほしい。
薄い膜のことなんて完全に忘れていて、俺の胎は深々と受け入れた鴫野から精液を搾り取ろうと必死だ。
もう、ずっと、どこもかしこも気持ちが良くて、俺はただ喘いで、揺すられて、鴫野に与えられる快感を享受する。
「っひ! っ、あ、く」
「こう、いく」
鴫野の低く唸るような声がして、中に、熱いものが放たれた。一番奥の柔い肉壁を何度も叩くように、勢いよく放たれる鴫野の熱い白濁。膜越しでもわかる熱さと放出の勢いに、眩暈がする。
中で鴫野がいっていることに、言いようのない幸福感が俺を満たしていく。満たされて、俺は意識を手放した。
「先輩」
視界を独占している髪を下ろした鴫野に、寝起きの無防備な心臓が跳ねた。
気絶していたらしい。
「っし、ぎの」
「よかった。身体、大丈夫すか」
「あー、ん、多分」
怠いけど、今のところ痛いところはなさそうだった。
改めて見ても、髪を下ろして無精髭を生やした鴫野は俺の理想そのものだった。
「なんかいつもと様子が違うから、焦りました」
「様子?」
「なんか、いつもより気持ちよさそうだし、甘えてくるし、ずっとかわいかったです」
「……お前のせいだろ」
「は?」
「お前の今の見た目、めちゃくちゃ好きなんだよ。そんなんで、名前で呼ぶから」
最後の方は声が尻すぼみになってしまう。
「先輩」
鴫野に抱きすくめられた。
俺は訳がわからないまま、されるがままだった。
「先輩、ずっとエロくて、大変だったんすよ」
「知らねーよ。俺のせいみたいに言うな」
鴫野に愛されるのが気持ちよくて、理性なんて早々に放り出して、鴫野がくれる快感を貪るのに必死だった。そんなふうにしたのは、鴫野だ。俺は何もしてない。
「いいっすよ、俺のせいで。その代わり、俺以外に見せないでくださいよ」
「見せねーよ、バカ」
こいつ、俺が今更他の奴とどうこうすると思ってんのかよ。ふざけんな。俺はもうこんなに鴫野に夢中なのに。
「お前も、俺以外にそれ見せんなよ」
鴫野を睨むと、鴫野は満面の笑みで俺を抱きしめた。
「絶対見せないんで安心してください」
耳元に吹き込まれたその一言と、自分を包む温もりとでちっぽけな独占欲を満たされて許してしまうあたり、俺は完全に鴫野に絆されてしまっている。
俺を包む鴫野の匂いが心地よくて、緩んだ頬を鴫野の肩口に押し付けた。
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