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第32話 一月某日【先輩の家】鴫野

 先輩の家はうちの隣の駅で、そこから十分ほどのところにあるマンションの一室だった。  遂に先輩のお宅にお邪魔した俺は、キッチンのダイニングセットに座ってお雑煮を作る先輩の後ろ姿を眺めている。  手伝います、と言ったけど、先輩には待ってろと言われてしまった。手持ち無沙汰な俺は、特にやることもなく、居心地の悪さを感じながら手際良く料理をしていく先輩を見守っている。  トースターで餅を焼くジージーという音が聞こえる。  一緒に住んだら、毎日こういうふうになるんだろうか。そう思ったら顔が緩んで、俺は慌てて頬をつねって顔を戻す。 「もうちょっとでできるから」  先輩が振り返る。 「あ、悪い。何も出してなかったな」  俺の前に何も置いていないことに気づいた先輩は、冷蔵庫から手早くお茶とおせちの残りらしきものを出してくれた。  そうしているうちに甲高い音を立ててトースターが鳴った。餅が焼けたらしい。 「餅、二個食えるよな」 「はい」  先輩がトースターの蓋を開けた。焼けた餅の香ばしい匂いがする。先輩は菜箸で大ぶりなお椀に餅を放り込むと、鍋の方に向き直る。  出汁の匂いに、空腹が加速する。 「お待たせ。熱いから気ィつけろよ」  先輩が目の前に差し出した大ぶりのお椀には、澄んだなスープに野菜と鴨肉が入って、餅が二つ入って、紅白の蒲鉾が乗っている。先輩お手製のお雑煮だ。  続いて箸置きと割り箸が置かれた。 「いただきます」  手を合わせる俺の正面に先輩が座る。 「先輩、料理するんですね」 「まあな。うちも、親が家空けがちだし」 「そうなんですか」 「おまえんちと同じ感じだよ」  先輩が笑う。 「ほら、食おうぜ」  箸を持った先輩に促されてお椀を持つ。サーバーを一口飲む。住んだスープは出汁と鴨の味がした。 「先輩、美味しい」 「ん、よかった」  人参も大根もちゃんと味が染みていて、上品な味だった。  まだお雑煮の味しか知らないけど、先輩の料理は好きだ。これ、一緒に住んだら毎日食べられるってこと?  俺も料理はするけど、先輩の料理が食べられるのは嬉しい。  頑張ってバイトでもなんでもするから、はやく一緒に住みたいと思った。  少し遅い昼ごはんの後。 「準備するから、ゆっくりしてろよ」  お雑煮のお礼に洗い物を終えた俺は、そう言った先輩にリビングのソファに座らされ、リモコンを渡された。準備って、もしかして。 「先輩」  俺は咄嗟に先輩の手を掴んだ。先輩は大袈裟すぎるくらいに肩を揺らした。 「俺に、させて」 「っ、お前」  縋るような目を向けてしまった俺から、先輩が頬を赤くして目を逸らす。耳まで赤くして、少し震えている。 「だめ、すか」 「……いいよ、来い」  先輩は顔を逸らしたまま、ぽつりと答えた。  そのまま、俺と先輩はバスルームに向かった。二人で裸になって、身体を洗って、先輩のお腹を綺麗にする作業を始める。  前に教えてもらったときより、先輩は緊張しているみたいだった。  バスタブの縁に座って脚を開いたおれの前に向き合って先輩が立つ。 「先輩?」 「なん、だよ」 「緊張してます?」 「うるせ、お前が急に、したいって言うから」  照れてるだけだった。  前に教えてもらったやり方を思い出しながら、先輩のお尻の洗浄をする。  シャワーヘッドを外して、ぬるま湯の溢れるホースを先輩の可愛らしい窄まりに宛てがう。 「先輩、痛くない?」 「ん」  先輩のお腹にぬるま湯を入れていく。  先輩は息を詰めて、眉を寄せて、何かに耐えるみたいな表情で俺にしがみつく。 「ン、ぅ」  背中を反らせてお尻だけ突き出したみたいな体勢になった先輩の、引き締まったお腹がひくりと震えた。 「ま、て、ケッチョーまで、入れるから」 「っ、え」  先輩がずるずると上体を下げ、腰の辺りにしがみつく。待って、こんな格好で? 「鴫野、そろそろストップ」 「はい」  お湯を止めると、先輩は、はあ、とため息をつく。 「もうちょい入れて」 「はい」  温度を確認して、もう一度宛てがう。 「っ、ん、ぅ」  悩ましげな小さな声が聞こえる。 「大丈夫、すか」 「ん、はぁ、へーき」  先輩はのそりと体を起こした。 「鴫野、キスして」 「はい」  触れ合うだけじゃ足りなくて、深く重ねて舌を絡めて唾液を混ぜ合う。甘えてくる先輩は可愛くて、もっと甘やかしたくなる。引き締まった腰を撫でると、先輩は身体を小さく震わせた。  うっすら張ったお腹を撫でると、先輩はびくりと身体を強張らせた。  唇を離すと、涎が糸を引いて消えた。 「痛い?」 「まだ、へーき」 「いつも、こんなことしてるんすか」 「そ、だよ。汚ねーの、やだし」 「あんたのなら、大丈夫ですけど」 「バカ、俺が、やなんだよ」 「ね、最後の一回は、俺の前で出してみせてよ」 「~~っ、ふざけんな」  先輩は顔を赤くしてそう言うけど、もう少し押したらしてくれそうな気がする。 「トイレ、いく」  そうやって三回とも先輩はトイレに行って、最後にローションを仕込んで準備が終わった。

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