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第37話 一月某日【ファインダーに君】鴫野
応募していたコンテストで最優秀賞をとって、副賞でカメラをもらった。今使っているカメラの後継機で性能が良いやつだ。今使ってるのもそんな感じで手に入れたものなので、写真部に備品として譲るとして。
新しいカメラの最初の一枚は、どうしても先輩を撮りたかった。
「で、ハメ撮りしたいって?」
放課後、カーテンを閉ざした俺の部屋。制服姿の先輩は、気怠そうにベッドに座って俺を見た。薄暗い部屋で、色素の薄い先輩の瞳は俺を揶揄うような挑発するような、そんな色を宿している。
「だめ、すか」
先輩の前に正座した俺は、届いて間もない新品のカメラとともにお伺いを立てる。
今回は内容が内容だから、ダメだろうなと思う。
だって、ハメ撮りだ。セックスしている先輩を撮りたい。ぐちゃぐちゃになっている先輩を、残したい。そんな俺の欲丸出しのお願いに、先輩が首を縦に振ってくれるのか、不安しかない。
「メモリーカードも専用にするし、家でデータいじるんで」
俺ができる精一杯の対応策と誠意を提示する。こんなんで先輩が了承してくれるとは思っていないけど。
「はは。いいよ、変態。綺麗に撮れよ」
先輩の見せる笑みは挑発的で、俺は息を呑む。
まじか。
先輩は思ったより簡単に了承してくれた。心なしか、声も楽しげだ。
こんなとき、先輩が馴染ませる色気は、尋常じゃない。俺を煽るとわかっていて、わざとそうする。わずかに目を伏せて、先輩は俺を見上げた。
そんなことされたら、俺は頷くしかない。
言い出したのは俺なのに、俺の方が気圧される始末だった。
「……ッス」
善は急げだ。めちゃくちゃ綺麗に撮ろう。電池パックの充電して、メモリカードは買える中で一番いいやつにした。嬉しい。やるしかない。
「じゃあ、始めるか」
思ったより、先輩は乗り気のようだった。安心したような、拍子抜けしたような、妙な気分だった。
カメラを持って先輩の前に立つと、先輩は少しだけ緊張を滲ませた表情で俺を見上げた。
「体勢とか、お前が決めろよ」
先輩の声が少しだけ硬くなった。俺だって緊張してるのに、被写体になる方が緊張しないわけがない。
「俺、横になるんで、先輩、舐めて」
言っただけなのに、俺の身体は期待で熱くなる。
「ん、わかった」
先輩は目を伏せて、少しだけ脇に寄った。
ベッドに上がって横になった俺の膝辺りに跨ると、先輩は俺のベルトを外して、スラックスの前を寛げる。
下着を押し上げて、はしたなく先端を濡らしている堪え性のない俺の布越しのちんこが先輩の目に曝される。
「お前、なんでもうこんなガチガチなんだよ」
先輩の声は心なしか楽しげで、指先が揶揄うみたいに布越しの昂りをなぞっていく。
「こんなん、なるでしょ」
先輩がハメ撮りさせてくれるのに、興奮しないわけがない。
先輩が笑って長い前髪を耳にかける仕草に、心臓が跳ねる。
「先輩、待って、そのまま」
俺の声に、先輩がこちらに視線を寄越す。薄暗い部屋だとシャッタースピードが遅くなるから、気をつけないと手ブレしてしまう。補正機能はついているけど、できるだけ綺麗な先輩を切り取って残したい。
ピントを合わせて、シャッターボタンを押し込む。
それが、記念すべき一枚目になった。連写で、五枚撮った。
「お前、撮りすぎ」
先輩が呆れ気味に笑う。五枚くらい大したことないので許してほしい。デジタルだから、メモリーカードが一杯になるまでは撮れる。一応、千枚撮ってもいいようにはしてあるから、大丈夫。
「まだ何もしてねーだろ」
それはそうなんだけど、先輩があんまり綺麗だったから。そんなことを言ったら、先輩は照れるだろうか。
先輩の指が下着のウエストゴムを引っ張ってずり下げると、勢い良く俺のちんこが顔を出した。
それを見て、また先輩が笑う。それも切り取った。
先輩はすっかり勃ち上がった俺のちんこに優しく唇を触れさせた。かと思えば、唇を割って出てきた舌が亀頭をぬるぬると撫で回す。
俺はといえば、そんな容赦のない快感責めに息を詰めてシャッターボタンを押し続けるしかできなかった。
唇、赤い粘膜、舌、綺麗にならんだ白い歯。それから、上目遣い。
ファインダー越しでも、それは俺を視覚から煽る。先輩のあったかくて柔らかい口の中の粘膜と合わさって、俺の限界はすぐそこまで迫っていた。
先輩はそんなことはお構いなしに、喉奥まで使ってゆっくりと大きなストロークで頭を動かした。
そんなことされたら、俺の限界はまた近づいて。
「っ、出る」
情けない声が喉から絞り出された。
先輩の熱い粘膜に擦られて、喉奥に締め上げられて、俺は呆気なく先輩の口に射精した。
何度も脈打って、先輩の舌の上に熱いものを吐き出す。熱くてとろみのあるそれが、いつもよりもいっぱい出てるのがわかる。
射精が落ち着いたところで、先輩は小さな音を立てて吸い上げた。唇が離れると、先端から唇へ涎と白濁が混ざったものが糸を引いて消えた。
「先輩、見せて」
俺のリクエストに応えて、身を乗り出した先輩は俺の方に顔を近付けると、口で受け止めた精液で白く汚れた舌を出す。先輩の舌に絡みついているのは俺の出したものだ。
「っ、やば」
俺は夢中でシャッターを切った。
カメラを支えていた左手を離して、俺の吐き出した白濁に塗れた先輩の舌を指先で摘むと、そのまま口に引き摺り込まれ、しゃぶられた。指先に感じる先輩の舌の感触は熱くぬるついて、ひどくいやらしいもののように思えた。翻弄されっぱなしの俺を揶揄うように、先輩の舌は生き物のように俺の指先をくすぐっていった。
そんな、いやらしい先輩をひとつずつ切り取っていく。
指を舐められただけなのに、俺のものはまた頭を擡げ始める。だって、指を舐められるなんて、つまり、そういうことだ。
「先輩、入れていい?」
「こうって呼べよ」
そうだった。先輩は、名前で呼ばれるのが好きだった。
「こう」
言われて名前を呼ぶのは少し照れる。だけど、呼ぶと先輩の表情が甘く溶けるのを知っているから、それを見たくて俺は、優しい声で先輩を呼ぶ。
「ふ、いいよ」
満足げに目を細めた先輩の、甘やかな笑み。俺が見たかったそれが、俺の心を満たしてくれる。
早く、先輩をもっとぐちゃぐちゃにしたい。
カメラを横に置いて、身体を起こした俺は先輩に唇を重ねながら体勢を入れ替えた。
先輩をベッドに横たえて唇を離すと、追い縋るみたいに先輩の舌が濡れた唇を撫でていった。
脚の間に陣取った俺はもう一度カメラを構える。流石に日が暮れてきて明るさが足りないので、枕元の灯りをつけた。
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