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第38話 一月某日【シーツの上】鴫野
淡い金色の光に照らされる、シーツに髪を散らした先輩の姿を撮る。そっぽ向いて視線だけこちらに寄越す。その視線を俺はファインダー越しに受け止める。
綺麗な形の耳が目について、そこにはピアスが冷たく煌めいている。メタルモチーフの、小さなピアスだった。いつか、先輩に似合うピアスをプレゼントしようと心に決めた。
だって、この人は全部、俺の色にしたい。
白い頬が上気して、赤みを帯びている。
こちらを伺う明るい茶色の瞳が揺れる。
「な、はやく、入れろって」
焦らしたつもりはなかったけど、先輩ももう我慢の限界らしくて甘く溶けた声でおねだりされた。
俺だって、そろそろ限界。
「こう、脱がせていい?」
「ん」
先輩の制服を、下だけ脱がせる。スラックを抜き取って、靴下を脱がせて、下着も取り去る。
先輩のもすっかり昂って反り返っていた。先走りをいっぱい垂らして、いやらしく光っていて、俺は思わず湧いてきた唾を飲んだ。
カメラを首にかけたまま、俺は制服もろくに脱がないで、すっかりその気になっているちんこをとりだした。ゴムを付けて、ローションをたっぷり垂らす。制服が汚れるとか、皺になるとか、そんなこと、どうでもよかった。
先輩の脚を拡げて、ひくひくと物欲しげな窄まりに張り詰めた先端を押し当てた。
それだけで、先輩は眉を下げ、瞳を甘く揺らした。俺はすかさずカメラを構えてシャッターを切る。
ゆっくりと押し込みながら、何かを堪えるように眉を寄せた表情を切り取る。
引き摺り出す時の潤んだ目を、小刻みに震える唇を、順番に切り取る。
ゆっくり出し入れすると、中がうねって絡みつく。腹の中は、俺しか知らない。いや、元セフレも知ってるか。
まあいいや。最新の先輩は、俺しか知らない。
ゆっくりと、先輩の中を味わうように擦り上げる。熱くて柔らかくて、時々甘えるように揶揄うようにひくつく先輩の腹の中。
「あんま、焦らすな」
先輩が泣きそうな声を漏らした。
焦らしたつもりはなかったけど、シャッターチャンスだらけでカメラに意識がいっていたせいで結果的にそうなってしまった。
俺はゆっくりと奥まで腰を進めて、こちゅ、と奥の襞に先端でキスをする。押し付けた亀頭に、先輩の襞は甘えるみたいに吸い付いてくる。
それだけで気持ちいいのに、これでまだ奥があるの、反則だろ。
勿論この先は、正真正銘、俺しか知らない。そんな小さい独占欲が、満たされる瞬間。
「奥、入れるよ」
先輩が小さく頷くのを見て、緩んだ襞に一際強く腰を打ち付ける。
張り出した先端が最奥に潜り込む。先輩の一番奥の柔いところを、張り詰めた先端がぐっと押し上げた。
「ーーッ」
先輩は白い喉を晒して、唇を力なく動かす。見開かれた目は涙で濡れて、綺麗だった。
俺はカメラを置いた。
もったいない。
こんな先輩、生で見られるのに、写真撮ってる場合じゃねーだろ。
俺は先輩の脚を抱え直した。先輩の腰を浮かせて覆い被さると、俺を見上げた先輩は嬉しそうに表情を蕩かせて腕を伸ばした。
先輩は俺の首に腕を絡めてきて、誘われるままに深く身体を繋げる。
そのまま衝動に任せて先輩の一番奥を突き上げると、腹に熱いものが散った。
見ると、透明な液体だった。
もう一回突き上げると、また出た。
先輩は潮を吹いて、腹はびしゃびしゃだった。
「こう、しお、吹いちゃったね」
「ぅ、みき、たか」
色素の薄い瞳を濡らして、先輩はすっかり蕩けた顔で俺を見上げる。涙が溜まった目は、ちらちらと煌めいて零れ落ちそうだ。
かわいい。
目を潤ませ、唇を震わせる先輩。
腰を引くと、引き止めるみたいに中がしがみついてくる。
一番奥に突き入れると縋り付くみたいにしゃぶられる。熱くて柔らかい粘膜に包まれて、締め上げられるのは堪らなく気持ちがいい。全部持っていかれそうだ。
「もっと、ぐちゃぐちゃになって」
もっと、乱れてほしい。俺ので、たくさん気持ちよくなってほしい。胸がざわつく。独り占めして、閉じ込めて、俺だけのものにしたい。そんな、熱くてどろりとした感情が腹の底から湧く。
先輩をシーツに押し付けて、腰を引いて、浅いところから一番奥まで突いて、捏ねて。
先輩はその度に身体を突っ張らせ、脚を、腰を、跳ねさせた。
先輩はずっといってるみたいで、甘えるみたいにしゃぶりついてくる。最奥の小部屋も、幹を抱き締める肉洞も、俺を喜ばせるばかりだった。
煮え滾るような熱いものが上がってくる。最奥を突き上げ、柔い肉壁に先端を押し付けて射精した。
先輩はぴんと伸ばした脚を震わせ、また潮を吹いた。
中は一滴残らず搾り取るみたいに、きつく締まる。俺は何度も脈打って、誘われるままに熱い白濁を放った。
「っは、ぁぅ」
とろんと蕩けた目が、俺を見上げて、淫蕩に笑う。
ほんと、この人はかわいい。
うっすら開いた震える唇に、俺は堪らず齧り付いた。
後始末を終えて、先輩と並んで、ベッドで撮れ高の確認をする。
控えめに言って、最高だった。撮りたかった先輩が、しっかり残っている。嬉しい。
一方の先輩は、何やら複雑な表情をしている。
まあ、そうだよな。やってるときの自分の顔なんて、考えたこともない。俺は間抜けな顔をしているような気はするけど。
先輩はとにかく綺麗だった。
一頻り見た後、先輩は何か言いたげに俺を見上げた。
「これ見てひとりですんなよ」
「え」
そんなの無理じゃないすか、と思った俺がそれを口にする前に、先輩が口を開いた。
「俺がいるだろ」
ああ、そういうことか。
いつだって、最新の先輩は目の前にいる先輩だ。過去の先輩より、最新の先輩を見ろと言うことらしい。自分にやきもちを焼く先輩はかわいい。
「ひとりでするくらいなら、俺を呼べよ」
「そんな、セフレじゃないんですから」
そんな都合よく先輩を呼んだりしたくなくてそう言った俺に、先輩は。
「……彼氏、だろ」
ぼそりと低い声で呟いて、先輩は唇をへの字にした。
そうだ。俺は、先輩の彼氏だ。先輩にそう言われると嬉しくて、顔が緩んでしまう。
「あんたほんと、そういうとこ」
緩む顔をなんとか誤魔化して、先輩を抱きしめた。
この写真はどうしようもないときのためにとっておこうと心に決めた。
目の前にいる、本物の先輩には、誰も敵わないから。
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