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第40話 二月某日【はやくここまで堕ちてきて】蓮見

 鴫野の部屋。  後ろの支度をした俺は裸になって壁に凭れた鴫野に後ろから抱かれていた。  鴫野ももう裸で、肌の触れ合う部分で体温が混ざって気持ちがいい。  鴫野の指先が、既にはしたなくひくついている俺の窄まりを撫でた。仕込んだローションが滲んで、鴫野が指先で撫でるたびにくすぐったいような快感が生まれる。俺の身体はそれに喜んで、また孔を戦慄かせてしまう。 「ここ、柔らかいっすね」  鴫野が指先を押し込んだり離したりして、焦らすみたいに窄まりを弄る。  散々自分でほぐしてあるから当たり前だった。 「ひとりでした? こう先輩」  耳元に吹き込まれる鴫野の甘い声が吐息が耳の縁をくすぐっていく。こそばゆくて、俺は思わず首をすくめた。 「ん、した」  今更隠すことでもないので、俺は正直に言った。正直なところ、恥ずかしさはある。だけど、もう散々セックスをしている仲で、鴫野だって俺でしてるんだから、俺が隠すのもなんだか無意味な気がした。 「俺のこと考えながら、ここ、弄ったの?」  ゆっくりと、鴫野が骨張った指をひくつく窄まりに埋め込んでいく。言い方がなんだか変態くさくて笑ってしまう。 「ん」  異物感に、俺は思わず小さく声を上げた。それはすぐに馴染んで、俺の吐息を甘く溶かしていく。 「どうやってしたの」  甘えるみたいな声が耳元から鼓膜を震わせる。息遣いまで聞こえて、心臓が跳ねた。鴫野が、俺に興奮してる。鴫野が興奮してることにまた俺の身体は昂ってしまう。 「っ、ケツ、弄りながら、ちんこ触って、お前に、ひどくされるの、想像、して」 「待って、先輩」  鴫野が俺の顔を覗き込む。目が怖い。ちょっと待て。なんで怒ってんの? 「先輩、ひどくされたいの?」  鴫野の声は少し震えていた。なんか、誤解されてんのか? 「ん、や、いてーのは、やだ、けど、お前に、雑に抱かれて、獣みてーなセックス、したい」  それなのに、俺ときたらぞくぞくと背筋を駆け上がる甘いものに身体を震わせて、掠れた声ではしたない願望を口にしていた。  胸の奥に押し込めていたものが、溢れ出して止まらなかった。上手く、全部言えたかどうかわからない。言いたかったことが伝わったかもわからない。 「はー、あんた、ほんと」  鴫野が項垂れた。額を肩口に押し付けて、深く息をつく。 「ひいた?」  流石にこれはなかったかなと思う。でも、嘘をついたって意味はないから、こう言うしかなかった。 「引くわけないっしょ、逆ですよ」  鴫野に抱きしめられる。  濃くなった温もりと匂いに、俺はまた昂る身体を抑えきれない。 「すき、先輩」 「引かねーのかよ」  そんな鴫野にちょっと引く。だけど、嬉しかった。 「俺だって、妄想であんたに色々してんのに、引くわけないでしょ」  お前もかよ。と思って少し笑った。  まあ、俺も鴫野も健全で不健全な男子高校生だから、仕方ない。もう何もかも曝け出して、鴫野を浴びて、心の底まで鴫野でいっぱいにしてほしい。 「けだものみたいなセックス、したいんでしょ」  耳元で甘く低い声に囁かれると、俺の正気は容易く揺らぐ。そうだ。俺は鴫野にぐちゃぐちゃにされたい。いっぱい触られて、涙とか涎とか汗とかに塗れて、鴫野に胸の奥まで引っ掻き回されたい。 「ぐちゃぐちゃになって、こう」  低く唸るみたいな鴫野の声を聞いたら、もう駄目だった。全部、鴫野に明け渡したくなってしまう。 「ぐちゃぐちゃになって、俺のところまで堕ちてきて」  鴫野も同じようなことを考えてて、安心した。 「おれじゃないと、ダメになってよ」  そんな切実さを滲ませた声が聞こえて、俺は頬を緩めた。  心配しなくても、もうお前じゃないとだめになってるよ。  答える代わりに、鴫野の腕に擦り寄った。 「みきたか」  腰には鴫野の硬いものが当たっている。貪欲な俺の身体は、もうそれが欲しくて仕方ない。なのに、鴫野はまだそっちをどうこうするつもりは無さそうだった。  鴫野の左手が俺の左の乳首を捏ねる。右手は中指と薬指で俺の中を掻き回す。二本の指で、前立腺を執拗に捏ねられる。  俺の左手はちんこを扱いて、右手で右の乳首を弄る。  鴫野の手と俺の手で、俺の身体から快感を引き摺り出していく。自分で呼び起こす快感と、鴫野の手で引き出される快感で身体中を埋められて、気持ちよくて溶けそうだった。  鴫野と俺の共同作業。夢のフルコースだ。鴫野の手から与えられる全部気持ちいい。鴫野の手は、もうどこがいいのか知り尽くしている。たまにわざと気持ちいいところを外すのが小憎らしい。 「ん、みきたか」 「こう、気持ちいい?」 「ン」  鴫野の指が乳首を捏ねる。縮こまって小さくなっているのを指先で優しく捏ねて、摘んで、指先だけで弄り回される。生まれる快感は腹の底に溜まって、鴫野が捏ねる前立腺と合わさって俺の腹の底の火種を煽っていく。自分で触るのよりもずっと気持ちいい。  腹の中をいじくる鴫野の指は、おれの前立腺をしっかり捉えて離さなかった。膨らんだしこりをゆっくり、輪郭をなぞるように撫でていく。ねっとりとした動きで押し込みながらなぞっていくせいで、俺は甘ったるく喘ぐしかない。壊れたみたいに先走りを垂らす俺の昂りは、射精したくてはしたなくしゃくりあげる。 「みきたか、いきたい」 「いいっすよ。いってみせて」 「っ、く」  二本の指が、しこりを押し込む。 「っあ!」  俺の昂りが跳ねて、白濁が噴き上がる。  ろくに擦っていないのに、俺は射精していた。  蕩けた身体が左に傾いて、顔を上げると、鴫野に唇を奪われる。深く重なって、舌を絡めて。唾液を混ぜ合わせて、俺はそれを全部飲む。鴫野の味がして、胸が満たされる。  すっかり勃ち上がって震える昂りからは、とろとろと白濁が垂れ落ちる。幹を伝うそれすら快感として拾い上げて、俺はもう限界だった。  ゴムを付けていなかったことを今更思い出す。最近こんなのばかりだ。鴫野のシーツを汚す罪悪感も、それに興奮してしまう背徳感も、みんなこの行為のスパイスでしかない。 「みきたか」  このまま入れられたら、どうなるんだろうという好奇心が頭を擡げる。所謂背面座位だ。 「な、みきたか、このまま、いれろよ」

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